Pass through of Destruction
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吹雪荒れる日本アルプス山中に、謎の物体が墜落したその日、空手に 明け暮れる高校生、斬馬 弦は、父の行方不明の報を聞いた。
同行を申し出た親友、柾 優と共に、妹、昴を残して父が消えたという 雪深い日本アルプス山中へと捜索隊の一員として赴く弦。だが、捜索隊は 謎の軍団ICONの襲撃を受け、撃たれ倒れた優をやむなく置いて、 捜索隊のリーダー叶 遮那とともに山中を逃走する弦。
そしてその逃走の さなか、二人は何物かが墜落したと思われる巨大な衝突痕を発見する。 衝突痕の中心、刻まれている、咆哮する獣面の様を刻む地割れ。
何者かの背中が、弦の背中を叩く。その地割れへ落ちて行けと。
落下した地割れの奥、謎めいた不可思議な空間、自分の肉体が"喰われる" 苦痛と恐怖に絶叫する弦。その時、弦の耳に、何者かの声が届く。生きて いたいか、と。
衝突痕から噴き上がる蒸気爆発と閃光! その"墜落物"を回収するために 派遣されたICONの巨大多肢兵器の軍勢の目前にて"墜落物"―― 回収対象X、破導獣ザンサイバーは覚醒した!
ICONの軍勢を血祭りに上げるザンサイバー! その覚醒を見つめる、 鬼面の戦士黒鬼は呟く。破導獣が復活した、と。
そして、ザンサイバーの咆哮に呼応するように、ひとつの山が崩れ落ちて いく。そこはザンサイバーが埋もれていたところ。
そして、20年前、この地にひとつの流星が落下していた…。
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小笠原諸島達磨島、ザンサイバーの基地となる施設"十字の檻 (クロスケイジ)"に召喚された弦と昴は、そこで驚くべき事実を 告げられる。
ザンサイバーは二人の父斬馬博士が、20年前あの地に落ちた流星―― 外宇宙からの機械体を基に、日本政府の依頼にて完成させた巨大 多肢兵器だった。だがその完成と共に斬馬博士はザンサイバーを奪取して 逃亡。導かれるように日本アルプスの、あの山へと墜落したのである。
そして、ザンサイバーを動かせるのは、斬馬博士の血脈を受け継ぐ弦と 昴の二人のみ。もし、二人がその承諾を断れば行方不明の父は国家反逆罪と して追われ続けることとなる…。
笑いながら、好戦的に、ザンサイバーに乗り込み戦うことを承諾する弦。 その兄の異様な変貌振りに、昴は戸惑い、狼狽するしかなかった。
その夜、昴とザンサイバーを狙い"十字の檻"に新入する暗殺者、斑三兄弟。 戦いの最中、昴は目の当たりにする。自分と兄、二人以外の人間が ザンサイバーのコクピットに入ったとき、その者はザンサイバーに "喰われてしまう"ことを。
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日本アルプス、あの件の山が崩れ落ちた跡に、"遺跡"と称される謎の 白いドームが出現していた。かつてザンサイバーの礎となった機械体が 流星として落下した場所。ザンサイバーを伴いそのドームの調査に赴く 弦、昴、そして遮那。
だがそこには既にICONの罠が張られていた。捕われの身となった 弦たちの目前に、姿を現すICON総裁、指導者イオナ…。
指導者イオナを人質に取り、自分たちを捕らえた敵の飛行要塞からの 脱出を図る弦。肉体の異変を覚えつつも暗殺者斑三兄弟を退け、そして、 笑いながら平然と殺人を犯そうとする兄の姿に昴はたまらず絶叫する。
指導者イオナは言う。ザンサイバーから降りろ。ザンサイバーに乗り 続けていれば、君たちは恐るべき破壊に加担させられる、と。そして、 指導者イオナの口から零れる言葉
"進化の刻印"
とは…?
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"十字の檻"総合研究主任、三枝小織博士。"十字の檻"とは別に独自の 目的意識を持つ彼女は、弦と昴を海上工業都市西皇市へと連れて行く。
そこで待っていたのは、動力部の起動実験を待つ、開発中の ザンサイバー2号機だった。兄を変えたものがザンサイバーならば、 その正体を確かめてやる。そんな無謀な決意の昴が乗り込むことにより、 ついにその動力に火が灯るザンサイバー2号機。だが、制御を離れた機体は、 そのまま弦と遮那も連れ込んで、隠されていた広大な地下施設へと落下 していく。
地下施設の中、三人の前に現れる黒鬼。そして黒鬼が、その地下施設の 正体を三人に露見する。そこは、三枝が独自に用意していた多肢兵器の 軍勢
"破導獣軍団"
の製造工場だった。そしてザンサイバー2号機とは、 その破導獣軍団の動力源となる"擬似ブラック・スフィア"の起動試験機に 過ぎなかったのだ。
かつて、"十字の檻"を築き上げザンサイバーの建造を指示した怪老、 西皇浄三郎。三枝は怒りに任せて叫ぶ。黒鬼こそその西皇を暗殺した者だと。 その黒鬼の破壊工作により、未完成の破導獣軍団もろとも炎に包まれる 地下工場。
果たして駆けつけてきたザンサイバーにて地上へと脱出する一同。 そして地上、西皇市を空襲する、斑三兄弟の生き残り斑天一郎が指揮する 多肢兵器、餓空骸の一団。危機に陥るものの、ザンサイバーに隠された能力 のひとつ、ジュウサイバー形態への変形にてかろうじて勝利を収める弦。
だが、その時戦場上空に現れる、銀色の冥衣を纏った髑髏のごとき機体、 ガイオーマ。
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果たしてガイオーマを操る者、それは、死んだと思われた柾 優だった。 だが、ザンサイバーに対し明確な殺意をもって揮われた攻撃がザンサイバー を地に伏せる。コクピットから放り出され、意識を失う弦。
ICON。黒鬼はガイオーマと優を戦場に繰り出した張本人、ICON 幹部ボーンを詰問する。ガイオーマは指導者イオナによって解体、封印 されていたICON最凶最悪の機体でもあったのだ。すべては対 ザンサイバーのためと冷笑するボーン。
一方、弦は謎の少女、月島蘭子の元で目を覚ました。自らを"傍観者"と 名乗る少女は、弦をトキさんと呼ばれる男の元へ連れて行く。そして男は 語る。ザンサイバーとガイオーマ、かつて、自分たちが阻止しようとした この二機の戦う運命が動き出してしまった今、自分たちがもはや"傍観者" ではいられなくなってしまったことを。指導者イオナの言う"進化の刻印"、 そしていつか黒鬼が残した謎の言葉「ザンサイバーは "復活"した」。 それらの言葉の真意を問いただす弦に、男はザンサイバーの開発記録に その答えがあると告げる。
自らが、20年前、日本アルプスの遺跡調査隊の一員であったという 事実と共に。
"十字の檻"に攻撃を仕掛けてくるガイオーマ。自らを捜索していた遮那の 導きにて、ザンサイバーで出撃する弦。そして激闘の最中、ガイオーマは 本来の姿、波動銀凰へと変形を遂げる…。
そして、ザンサイバーの開発記録を再見していた三枝。その記録上に残る、 20年前日本アルプスに落下した機械体の画像。ザンサイバーの動力源 でもある正体不明の異次元干渉システム、ブラック・スフィアを孕む それは…ザンサイバーの胸部そのものの、鋼の獣面である。黒鬼の言う 「
ザンサイバーの復活
」という言葉を裏付けるように――。
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ザンサイバーとガイオーマの激闘。その戦いの中、機体内部に逆流した エネルギーに苛まれ、弦と共に地上に落下してしまう優。だがあくまで弦を 抹殺しようとする優は、駆けつけた遮那を人質に弦を誘き出すべく逃走する。 一方、ザンサイバーあわよくばガイオーマの二機を回収するべく出動しよう とする"十字の檻"実動部隊に同行を申し出る昴。
自らの肉体に起きる異常、それを自覚しつつも優を追い詰める弦。 決して望んでいなかったはずの、親友との生身の死闘。そして弦は、 優の肉体がガイオーマに搭乗するために機械化されているのを垣間 見てしまう。だが、優もまた、今ここにいる弦が"偽者"であることを、 駆けつけていた昴の前で暴露してしまう…。
再び巻き起こるザンサイバー対ガイオーマの激突。そして弦も回想する。 果たしてあの日、日本アルプス、雪と氷に埋もれていたザンサイバーの中で "本物"の斬馬 弦に何が起こったのか…?
窮地に陥るも、ジュウサイバーへの変形でかろうじて勝利を収める弦。 だが"本物"の弦の復讐を誓う優と、そして"兄の死"への衝撃から、誘われる ままに黒鬼と行動を共にする昴…。
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ザンサイバーの"復活"、ブラック・スフィア、 日本アルプスの"遺跡"、ICON、"十字の檻"、 故西皇浄三郎の思惑、破導獣軍団、"傍観者"たち、そして進化の刻印…、
果たして答えを知る者は誰か? すべての呪詛はばら撒かれ、 未だその収束は見えない。
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