映画えっちほー8


「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」
「東京物語」
「修羅雪姫 怨み恋歌」
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」
「トリプルX」
「ラーゼフォン 多元変奏曲」
「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 番長足球」
「黒線地帯」
「マトリックス レボリューションズ」
「VERSUS」


「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」

 またもや副題からして男の子ゴコロにヒットする「ドラえもん」です。
 自分の星のクーデターから脱出した宇宙人の 少年大統領(ミクロマンサイズ) が、例によってわざわざのび太くんの住んでる町に逃げ延び、 狭義心に燃えたジャイアンの殴り込み宣言 から、やはり例によってのび太くんたちが外人部隊化して 悪の将軍の支配下に置かれた星へ代理戦争仕掛けるというストーリー。いえ 勝てば官軍の道理が自衛隊が派遣されてる国でまかり通る世の中、今どき ではテロリストになりに行ったというほうが 正しいか(含笑)?
 かくしてレジスタンス の一員となったのび太くんたちですが、結局大して役に立たない のび太くんはともかく、単身敵の宇宙戦艦に 二度に渡って生身で立ち向かうジャイアン。敵の襲撃にビビって 一度は逃げ出しながら、しずかちゃんの危機を前に勇気を振り絞って 戦いに赴くスネ夫など、脇役たちの 侠気的な見所度かなり高し

 そして、この映画の一番良い点はと言えば、なんたって武田鉄矢の 歌う主題歌「少年期」。劇中でも地下レジスタンスのアジトにて、 メンバーのひとりがのび太くんたちの前で披露するというシチュエーション があるのですが、これがもう…空に一番星輝く夕暮れの博多の町を、 泥んこで母ちゃんの待つ家に走っていく半ズボンの少年という情景が 思い浮かぶという、しんみりした名曲…。ああっ、武田鉄矢による 「ドラえもん主題歌集」なんてCDが出てないもんかとか思いますが、 この曲聞くためだけでも見る価値ある映画かも。

 あ、この映画の悪の将軍役は黒十字総統こと八名信夫。時期的に 悪役商会が売り込んでいた頃 の映画ですかね(こんなところから何げに上映時期の世相を推し量ると)。


「東京物語」

 意表を突いて小津安二郎です。衛星映画劇場で放映されたのを機に鑑賞。 いえこういう機会なくして普通に小津安二郎見たりはまずしないので (苦笑)

 尾道から、東京に住む子供達の元を尋ねる老夫婦。しかしそれぞれ家庭を 持ち、自分たちの生活のある子供達はなかなか老夫婦に構ってやれない。 そんな老夫婦に親切に接したのは、戦死した息子の未亡人となった嫁 ただひとりだった…。

 なんでしょうねえ…恥ずかしながら自身を思い起こすと、就職して長野 にいた頃 父方の祖父母は既に亡く、母方の祖父母について、母親と一緒に松本城を 案内してやったのが祖父母と共にした最後の思い出というか… 観客の、おじいちゃんおばあちゃんと接した記憶を思い起こさせる 物語であると共に、その自身の接した記憶を反省させる映画でも あります。既にその母方の祖父母も他界した今となっては、 余計そんなことを見てて考えてしまったのかも。
 自分ごときが今さら語るのもおこがましいですが、そんな観客の 胸中の情景を思い起こさせるという、「映画を見た観客に、 劇中の物語と観客自身の記憶をクロスオーバーさせる」あたりの演出力が、 現在に通じる小津安二郎の高評価の理由なのかも知れないです。


「修羅雪姫 怨み恋歌」

「キル・ビルVol.2」上映直前&「Vol.1」DVD発売直前予習鑑賞(含笑)。 一応言っておくけれど、近年作られた釈由美子のじゃなくて梶芽衣子 主演によるオリジナル版です。シリーズ2作品作られたうちの2作目 (こっちしかレンタル屋さんになかった…)。
 時代は明治。愛する家族を惨殺され、仇のひとりを葬ったものの 殺人罪で収監され死刑宣告を受けたひとりの女。その女の怨みを託され 監獄の中で生まれた子、鹿島雪。物語は母の怨みを背負った娘の、 白雪を血飛沫で赤く染める果てなき復讐の旅路…。と、ここまでが 未見の第1作。今回鑑賞の第2作では、前作での復讐劇から大量殺人者 として官憲に追われる雪の逃亡劇から幕を開ける。私怨を晴らしたことで 人生の目的を見失い、逃亡の旅にも疲れ果て、自ら官憲の縄につく雪。 だか彼女の、“修羅雪姫”としての暗殺技量に目を付けた特警のボス 岸田森は、彼女を反政府活動家の一掃のための手駒にしようと画策する。 ここまでが「ニキータ」か「スケバン刑事」と思わせながらも、最終的には 岸田森の卑劣な企みを知った雪が反政府活動家の側につくというあたり、 実に藤田敏八監督&梶芽衣子によるアウトロー映画路線(「野良猫ロック」 シリーズとかね)。

 それから物語は岸田一派による反政府活動家への拷問、グループ 壊滅のためのペスト菌の投与、書類1枚を無きものとするために貧民街に 火を放つ等の悪行が延々と描かれ、心の奥底に眠る怨みの炎に火が付いた 修羅雪の、喪服に身を包んでの怒りの逆襲開始…いえ構造的には まごうことなく「必殺シリーズ」なんですが。
 まあ「必殺シリーズ」が国民が体制に声なき怒りを叫んでいた時代の 象徴とすれば、この映画のストーリーも頷くべきものではあります。そして 時代はバブルへと移行し、目前の虚構たる繁栄に我を忘れた国民は 怒りの声を忘れ「必殺シリーズ」は自然消滅…。そのバブルの時代が終わった 現在、長すぎる不況に国民は怒りの声すら上げられない苦境の時代へと 移り変わり、もはや体制への怒りを体現するキャラクターなど誕生も ままならない時代。
「キル・ビル」がそんな現状に対する突破口にも思えたイチ観客としては、 その土壌となった作品のひとつ、素直に良かったというか、結論 第一作なんとしても見てえ と。梶芽衣子のクールビューティーぶりと血飛沫踊る立ち回り の凄絶さの画像的コントラストと併せて、ハイ存分に面白かったです (花マル)。


「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード」

「オトナ帝国の逆襲」、「アッパレ戦国大合戦」と続いた哲学的なテーマ をバッサリ切り捨て、ギャグオンリーに突っ走った、ある意味 「本道」でもあるしんちゃん映画。ただ、 やはり前2作に心をわしづかみにされた人間からすれば物足りなさを 感じてしまったのも事実で…。劇中、ブチギレたあまりとはいえ仮にも 悪の組織の戦闘員の集団を易々と蹴散らすしんちゃん一家の強すぎる 理由がなんとも判然としないというか(父ちゃんと母ちゃんが元ヤン とかいう設定あるの?)、今回の敵ってようするに熱海のフロ屋さん なのに、そんなんがなんでメディアや国家権力を動かせる程の政治力 持ってるんだとか。いやギャグ映画見てて悩んだら負けだけど。

 はいあちこちから無駄なまでに褒められすぎた前作、前々作から脱皮を 計って、見事に観客の期待を裏切ってしまった映画。そんな感想も否めない です。「焼肉喰いてえ!」という目的意志に基づいて暴走する しんちゃん一家の図、というのは純粋にギャグ映画として評価に値する 部分のはずなのにね(すんまそん)。


「トリプルX」

 なにげに日々の生活に疲労を覚え、ひたすらスカッとしたい時は アクション映画に決まってます 。それも、演出面でダレることなく最後までわくわく見れるような 映画…近年の映画でなら筆頭はコレでしょう。

 ザンダー・ゾーンへようこそ。 鋼鉄の親分ヴィン・ディーゼル演じる筋肉スパイ1年生ザンダーの、 まるで石川 賢の漫画から飛び出してきたかの剛碗痛快な活躍ぶりは、 007シリーズのパターンを踏襲しつつも決してパロディーに陥ることなく 「新しいスパイアクション映画を作る!」という制作側の気概に満ち溢れ、 ピアーズ・ブロズナンの現007のイケメンぶりに飽きてきてたイチ 観客をして、「21世紀のスパイに必要なのはイケメン顔じゃない、 筋肉だ!」という画面からの主張がビシバシ伝わってきましたです。
 ともあれ観客を飽きさせることなくノンストップで見せ場が続く 一級品のアクション映画として自分の中では高評価の映画でして、 ヴィン・ディーゼル親分の身体を張ったアクションの数々とその鋼鉄の 筋肉は、新たなタイプのヒーロー誕生をダイレクトに視覚に焼き付けて くれます。
 ザンダー・ゾーンへようこそ。 金掛けたハリウッド大作アクション映画は決して否定対象ではない、 金掛けた分の面白さがあるかどうかだけが評価対象 であります。


「ラーゼフォン 多元変奏曲」

 WOWOWで放送されたのを機に鑑賞。テレビアニメとしての「ラーゼフォン」 は、ロボットの武器が歌声とかのアイデアを出してきた割に、肝心の ロボの活躍シーンがひたすらロボ物のパターンを外してきた演出が されてたため、ロボ物的なカタルシスは無きに等しく、 血の気の多いスパロボファンとしては個人的 「スパロボ魂、薄っ」なアニメです(発売されたラーゼフォンの プラモも買ってないし)。
 しかし、そうしたアクション面での気の抜けぶりを覆い隠すぐらい、 「エヴァ」以降の作品としての設定と物語は凝りに凝っていて、 東京を世界から隔離した異空間〈東京ジュピター〉の小松左京作品から インスパイアされた世界設定には放映当時「ウゥム」と唸り(あまつさえ 劇中に小松映画のポスターが登場するので非常に判りやすい)、そして、 なんてっても時を隔てて再会した恋人たちという切ない物語は… これは見ていて「きゅん」となってしまったポイント。
 こいつの「スーパーロボット大戦MX(2004年5月発売)」参戦は 間違いなくバンダイからのゴリ押しですが、東京ジュピターの設定とか 切ない物語などがゲーム中どう生かされるのか? 主人公、綾人は いじけくさった根性をやっぱりブライト艦長のビンタで修正されるのか (「母さんにも殴られたことないのに!」)とか興味は尽きませんです。

 あ、肝心の映画のほう、テレビ版での過多な登場人物がバッサリ整理 されてる分ストーリーにも入りやすく、「ラーゼフォン」という物語を 2時間で理解するには最良のテキストです。実はある意味「劇場版∀ ガンダム2部作」よりも理想的な映画化かも(いえ「∀ガンダム」の ほうがアクション的な見せ場は多いんだけど…/苦笑)。それと、オチも TV版と異なっていまして…実はヒロイン、遙の視点から見た 「ラーゼフォン」という物語、といった見方もできるのかも。


「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん 最強伝説 番長足球」

 竹内 力が岸和田最強の高校生、カオルちゃんを演じる人気のVシネ シリーズです。ぶっちゃけこのシリーズ今まで見たことありませんでした。 借りた理由は、なんてってもレンタル屋の棚で見たパッケージの タイトルインパクト。だってよー、 番長が、サッカーやるっ てタイトルで、主演が竹内 力だもん。これだけ 無茶な組み合わせでつまらない訳がありません(たぶん)。

 遠い遠い昔、はるか彼方の西日本で…。時は「少林サッカー」が作られる 40年前の1962年、岸和田をシメる最強のオヤジ顔番長、カオルちゃんが ついに全国制覇に乗り出した。単身日本中の高校を渡り歩き、548人の番長を ぶっ倒して、遂に全国の番長の頂点に立って岸和田に凱旋するカオルちゃん。 当時返還前で、行くことができなかった沖縄の番長も向こうからわざわざ 岸和田まで来てくれたのでエニシングオッケー。549人目も倒して意気揚々の カオルちゃんだったが、うっかり定時制高校 をシメるのを忘れてた…。かくしてまずは手近な岸和田定時制 高校の番長(記念すべき550人目)をぶっ飛ばすカオルちゃんだったが、 その番長が部員きっかり11名のサッカー部のキャプテンを勤めていた ことから、カオルちゃんもサッカー部に入部するハメに。だが、カオル ちゃんにはサッカーにまつわる悲しい思い出があった。少年時代、 サッカーがヘタだった せいでイジメられてたことがあったのだ…!

 かくしてストーリーは、定時制高校の存続を賭けた試合へ雪崩れ込んで いくのだが、博多、東京、東北、四国の番長がカオルちゃんに復讐すべく 岸和田に乗り込んできたり、カオルちゃんに淡い想いを寄せる不良娘が 親父(羽賀研二!)の起こした詐欺事件のせいでヤクザの事務所に拉致 られたりと怒濤の展開を挟み、コテコテの関西風ギャグテンポとあいまって 退屈することなく見れましたです。模型の塗装中にこうしたバカ映画 (Vシネですが)見てたりしたらいけません。バカ笑いしながら見てたら 手元が狂いそうになることしばしば。
 竹内 力が演じるキャラクターらしく、ケンカのことしか頭にない 最強番長ながら義理と人情には厚いカオルちゃんのキャラクターは非常に 好感。出番少ないながらも、父ちゃん役池乃めだか師匠もいい存在感 示してくれます。キャスティングといい全編のコテコテ度といい実に 「関西だのお」というVシネですが、その 物語の痛快さとカタルシス度は白眉モノでして、模型作りながらでなく ゴロゴロと 酒かっくらいながらゲラゲラ笑って見るには非常に最適。もちろん 女と一緒に見る映画では決してありませんが (笑)。

 んで、ビデオ屋の棚でシリーズを確認すると、カオルちゃんはサッカーの 次は、山奥で妖怪 を相手に戦っていて…ぜひ見よう! いやあ、ある意味なんでもあり っぽさがたまらないです。


「黒線地帯(60年、監督/石井輝男)」

「映画秘宝」で新東宝の小特集なんかしてて、なかなかレンタル屋でも お目にかかれない新東宝映画、こうして見る機会が持てたりすると WOWOW加入してて良かったなあとか思うです。
 殺人事件に巻き込まれ、容疑者となってしまった天知 茂演じる フリー記者が、昭和35年当時の東京のアンダーグラウンドを彷徨いながら 真犯人を追う。
 若き日の作品とはいえやはり石井輝男監督、当時の風俗を天知 茂を レポーター代わりに紹介しているようでもある展開は、まるで今はなき 良き時代の深夜番組「11PM」や「トゥナイト」的でもあるというか(笑)、 いえ基本的には天知主演のハードボイルド・タッチな映画なんですがね。 ただ、やはり時代の要請もあるのか天知が訪れる先々の踊り子やニューハーフ (当時そんな呼び名はないが)の方々に「君、なんでそんな仕事してるの」、 「君たち男に戻る気はないの」とか、いちいち説教めいた批判をするのは なんか見ててがっぺむかつくというか…我ながら80年代個人主義 「他人様に迷惑かけん限りなにやろうが勝手だ」の思考に浸かっております。

 あと、この映画の音楽は、なにげにこれまた若き日の渡辺宙明。この 映画から40年後の現在、まさかヲタ相手の乱造アニメの音楽で喰う 羽目になるとは思ってもいなかったであろう作曲家の、若き日のスコアに 耳を傾けるのもまたこの映画の見方ですか(苦笑)。


「マトリックス レボリューションズ」

「マトリックス」という映画の魅力が、「自分が信じていた現実が虚構で あったことに気付いた時、その虚構を粉微塵に粉砕していく爽快感」に あったとすれば、この映画については「下手に無意味な続編作って物語を 終結させるより、第1作の世界観を崩さない番外編で手堅くファンを 満足させる」手法のほうが正解だった気がします。ぶっちゃけ自分にとっては 「アニマトリックス」のほうがよっぽど魅力的な「マトリックス」関連 映像。

 物語が単なるレジスタンスストーリーになってしまったこの映画に、 第1作の、これからどれだけの虚構が突き崩されていくのかを予感させる、 地平線まで続く武器庫のワクワクした期待感はついぞ見えません でしたねえ。


「VERSUS」

「ゴジラ ファイナルウォーズ」予習のため、北村龍平勉強鑑賞。きっと 「ゴジラ ファイナルウォーズ」ってこのノリの映画になるんだ! これ だったら見たいぜ! ともかく映画が始まってからラストまで、それらしい ストーリーなんかあってないような物、登場人物どいつもこいつも みんなが戦い合う! 人体破壊の描写や暴力がハバを利かせる世界観 など、やはり北村龍平監督も石井輝男の申し子らしいというか、わっし みたいに考えなしで血の気の多い愚民観客 には最高のバトル・エンターティメント映画です。
 いやあ、これだったら上戸 彩主演というだけで敬遠してた「あずみ」 も見るか? ともかくこのバトル演出が出来る監督しいうことなら、 怪獣総進撃映画となる最新ゴジラはまかせていいかも。ただし、 特撮ファン的には一度も評価されたことのない監督 という不安も働くんですが(失礼)。



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