映画えっちほー7


「あの頃ペニー・レインと」
「血を吸う薔薇」
「超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説」/ 最終回「死闘」
「地獄の剣豪 平手造酒」
「リベリオン 反逆者」
「大盗賊」
「ドラえもん のび太と鉄人兵団」
「地獄甲子園」
「江戸川乱歩の黄金仮面U/桜の国の美女」
「独立愚連隊」


「あの頃ペニー・レインと」

 10本や20本に一度はモテそうな映画を見ようシリーズ。タイトル からして青春モノです。
 家出した姉ちゃんの残したレコードからロケンロールを聞くことに 人生の意義を見いだした生産性のないロックヲタ の少年が、たまたま寄稿したロック記事が音楽雑誌に認められ、 あるバンドのツアーの密着取材を引き受けることに。グルービーの 女の子を連れ回しての乱痴気騒ぎ、メンバー間の不協和音、 いちいち滞在先からの電話を強要してくる 母ちゃんからのプレッシャーなどに頭を悩ませつつも共に ツアーを旅していく。そして、ふとメンバー達との間に芽生えかける 仲間意識と、同行するグルービーの女の子のひとり、ペニー・レイン へのほのかな憧れ…。

 …日頃あえて青春モノ映画から縁遠くしている観客からして茶化す 方向に逃げさせてもらいますが、 うわあまずっぱい。生産性のないヲタ少年のワンシーズンの 旅を描いた映画だけれど、なんだか見終わる頃には、映画を見ていた 自分の表情が凄くイイ顔になってました(外ヅラでなく内面的に)。 そんな表情になれる映画こそが、見るべき価値のあった映画と 思いたいです。


「血を吸う薔薇」

 アニメ版「真月譚 月姫」があまりに○○なもんで借りてきました。 国産吸血鬼モノ映画の代名詞的な映画であります。

 ふかわりょうみたいな髪型になってる岸田 森が学長を務める 山奥の全寮制女学校に、新任教師として赴任 してくる黒沢年男。岸田 森の家に泊まった赴任初日、事故死したはずの 岸田 森の奥さんと行方不明の女学生に襲われる一夜を過ごし、そして 学園では次々と行方不明になる女学生と、その事件の影に蠢く黒マントに ゾンビメイクの岸田 森の影が…。

 ネタが目新しくないのは制作時期(74年)からまあ当然として、 なんてーか、どうにも説明不足的な部分が多い映画。黒沢年男は 実は吸血鬼であるふかわ髪型岸田 森から次期学長候補と 白羽の矢を立てられ赴任してくるんだけど、 その黒沢年男が選ばれた理由とか、具体的に新学長になったらどうなる のかなんて説明は判らずじまい。黒沢年男の協力者として助演する 田中邦衛も、事件の謎を追ううち観客の知らない間に沼に沈められて殺され、 そもそも吸血鬼の岸田 森の正体が結局何者なのかもよく判らないまま (一応映画の舞台となる土地の地方伝説は語られるんだけど、それと岸田  森との具体的な関連がよー判らんと…)、結局黒沢年男の逆襲喰らった 岸田 森が絶命して唐突に映画も終了。
 なんだかなあ…うーうー唸りながら夜な夜な女学生を襲う岸田 森の エキセントリックさだけが売りみたいな映画。なんか岸田 森の動きからして 吸血鬼というよりはゾンビだし。一応東宝制作、田中友幸プロデュース ということで、「電送人間」や「ガス人間第1号」からの系譜に連なる 怪奇人間シリーズの一遍に数えられる映画なのかも。題して「 美女と吸血人間」みたいなね。


TVアニメ
「超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説」
最終回「死闘」

 タカラ系アニメの最終回は無駄に凄い伝説がまたも更新されたというか、 20年来のトランスファンとして、最終回ほぼ全編を使って描かれるコンボイと メガトロンの死闘の、もはや日本のセルアニメで出来るのはコレが 最後でなかろうかというぐらいのハイテンションな作画ぶりには もうひたすら感動でありました(よっしゃ!)。

「その胸の重りさえなければ、お前の本性はメガトロンと何ら変わる ところはない… その胸のマトリクスが、そんなに重いか、コンボイ!」
 トランスフォーマーすべての仇敵、 ユニクロンに自らの存在意義を戦うためだけのものと 指摘されて、まっすぐな反論を返せないコンボイという図はかなり 新鮮でありまして…歴代コンボイたちが、子供番組の主役らしく 純然たる正義の味方としてのみ描かれていたことを思うと(悪名高い 「ヒーストウォーズネオ」も、ワンマンアーミーとして人を率いることに 向かないことを自覚 しつつ、徐々にリーダーとしての自覚を持っていくというビッグコンボイ の描き方は割と好き)。

「実は貴様も、憎しみの心に蓋をして戦ってきたのではないのか…儂は お前の本心が知りたいのだ、トランスフォーマーとしてのな!」
 そして同時、戦いこそ自らの存在意義であり、 誇りとするメガトロンとの決闘の申し出に際し、司令官の証 マトリクスを投げ捨て、ひとりのトランスフォーマーとして決戦に挑む コンボイ。サイバトロンとデストロン両陣営共通の敵であり、 1千万年に及ぶ戦いの元凶であったユニクロンも倒し、実質上戦う理由は 無くなっているにもかかわらず…。

「サイバトロン総司令官という肩書きを取れば、私もただの トランスフォーマーだったようだ… メガトロン、お前の言うとおりだ。だから今は、ひとりの トランスフォーマーとして戦おう!」
 そのコンボイを決闘に駆り立てた理由を語るのは、決闘を仕掛けた メガトロン本人という皮肉! これまでのシリーズにて純然なまでの 正義の化身として描かれ続けてきたコンボイ、同時 悪の権化として描かれ続けてきたメガトロン。両者を 分け隔てていた物は、求める物が光か、闇かという違いでしかない。そう、 遠く離れているようで、実はあまりにも似通いすぎていた二人…。
 その互いの存在する意義、生まれた意味、生きる証、すべてを 相手に対して証明するために、この二人の決闘は避けられない物、 運命の必然だったのだ。

「私は戦いの中でも、光を見続けたいのだ。勝つのが正義でなく、 正義が勝つのだ!」
「それも良かろう! だが、戦いの中でしかその言葉を導き出せなかった こと、憶えておけ!」

 そして、決着。虚空に消えゆくユニクロンへと呑み込まれていく メガトロンを救おうとするコンボイ。だがそのコンボイの手を払い除け、 メガトロンはユニクロンと共に何処とも知れぬ虚空へ消えていく。
 すべてが終わり、宇宙を漂うコンボイ。その傍らに流れてくる、 投げ捨てたはずのマトリクス。だが、コンボイはそのマトリクスを 自らの胸に戻そうとはしない。「マトリクス…今の私に、持つ 資格はない」。

 愚考すれば、この台詞に込められたコンボイの意は 「敗北」だ。決闘に勝つことが勝利ではない。決闘を選んだ道が 正しかったのか間違っていたのかは誰にも断じることは出来ない。 だが、メガトロンと自分が表裏一体であったことを、 自分自身が証明してしまったのだ。「破壊と戦闘の権化」と自らが断じてきた メガトロンが、自身の最も遠くて近い分身であったことを、 「正義と平和の守護者」であらねばならなかった自分自身が 証明してしまったのだ。

 それはコンボイ自身の「 ひとりのトランスフォーマーとしての決断」が、 無意味な結果になってしまったことを意味するのだから…。

 オーラス、それでも信頼と、友情を訴えるメッセージを 残すコンボイの胸にやはりマトリクスはない(最後のトランスフォーム のシーンで確認する限り)。それはコンボイが、自ら超ロボット 生命体、戦うために生まれた存在という運命を受け入れたが為か? 否、 サイバトロンもデストロンもない、新たな道を歩き始めたトランスフォーマー の一員として生きること、それを示していると思いたい。 「サイバトロンという一軍の将」の証を捨てることで。
 変革の中を往く者、トランスフォーマーとして。


「地獄の剣豪 平手造酒」(54年、監督/滝沢英輔)

 日活制作による時代劇映画です。病身の身体ながらも千葉道場の 師範代と目される腕を持つ凄腕の剣士、平手造酒(辰巳柳太郎)。だが ふとした諍い事から試合の対戦相手を斬ってしまい、千葉道場を 放逐され逃亡の道に陥る羽目となってしまう。身を蝕む病と、 さらにその身を持ち崩す酒浸りの逃亡の日々。流れ着いた宿場町で ヤクザの用心棒に収まる物の、飄々としたライバル剣士 近藤(宇野重吉)の出現や、 何故か夫婦の真似事のように同衾することとなる旅の女お吟 (山田五十鈴)との触れ合いと彼女の手厚い看護を 経て、その間違いなく幸福な日々の中に希望を見いだし、 初めて、自ら生きていくことを願うようになる。
 手にした幸福な人生を、お吟と共に穏やかに過ごす 造酒であったが、お吟の 島帰りの元亭主が二人の前に現れたことから、その穏やかな日々は 儚くも崩れ始める。

 元亭主を斬ってしまったことから、自身の希望の象徴であるお吟に 去られ、再び酒と絶望の日々へと戻る造酒。そして巻き起こるヤクザ 同士の抗争の抗争の中、相手側ヤクザの用心棒近藤から、 最愛の女房、お吟が河原で待っていることを知らされる…。

 人生のルートを踏み外し、絶望へと墜ちていく男の再生のドラマと 思わせつつ、再び絶望に突き落とす作劇は見ていて圧巻で、常に絶望の 縁に立つ主人公を通して、これほどまでに 強烈に「生」のひと文字にこだわってみせた物語もないです。 そのテーマはラスト、 造酒との決戦をあえて避け、笑いながら造酒の前から去っていく 近藤の「生きてなければ何も始まらん」の言葉を前に、傷だらけの 身体でお吟が待っている河原へと向かって行く造酒の、「生きるんだ…」 という台詞に集約されて…。その造酒の前に広がる、川面に映える 夜明けの空は、かつて造酒がお吟に笑いながら言って見せた言葉「空が こんなに綺麗とは知らなかった」、あの時の空の色と重なって見えた はずだ。たとえモノクロの画面と言えど、その画面の中の空はあくまで 美しい。
 半世紀前のモノクロのフィルムの中に、美しく刻まれた空と「生」への メッセージ。もはや半世紀前の増産時代劇映画の一本、今後のソフト化 の可能性も低くこうして存在自体を忘れられても、人知れず 輝く映画はあるのだなと。正直にいいもんが見れたという気持ちに なれましたです。


「リベリオン 反逆者」

ガン・カタです。
ガン・カタのプロモーション映画です。
文句なしに格好いいです。

 まあ説明すると、ガン・カタってのは劇中内に登場する架空格闘術で、 二丁拳銃による近接戦格闘技 という、まさにフィクションの中でしか成立し得ない格闘術 なのですが、全編通して繰り出されるガン・カタの、感情を押し殺した 主人公から繰り出される絶叫、熱血無縁にしてクール&アグレッシブ な技の冴えは、 「マトリックス以降の作品」とか呼ばば呼べ。ともあれ観客を アクションから画面に引き込むという、アクション映画の命題を 見事にクリアしていて見ている分には非常に心地よい映画でした。
 ともあれストーリー(一応復讐物のフォーマットになっているので、 主人公への感情移入のしやすさとかも及第点以上)とかより、 まずはガン・カタのアクション演出に 酔うための映画というか、一応アクション物っぽい創作もやってる 人間としては、こういう映画からもらう物は沢山あるです。


「大盗賊」

 昭和38年、世界の三船敏郎主演で作られた傑作大冒険映画です。 我が国の冒険映画の傑作として「ルパン三世 カリオストロの城」の 名を挙げることにはおそらく国民の大多数から同意を得られる物と 思います。ただ、その原点としてこの「大盗賊」があることを、この 映画を見た者としては声を大にしたいです。

 狭い日本を飛び出し、冒険に夢を馳せ南海の洋上を往く快男児 ルソン助左ェ門(三船)。だが今や超星神も戦う東宝の大プールに 巻き起こったパーフェクト・ストームにより、助左ェ門の乗った船は あえなく転覆。かろうじて生き延びた助左ェ門だが、脱出の際船から 持ち出した財宝の山は、偶然通りかかった船首にドリルの付いた海賊船 に乗り込む黒海賊によって奪われてしまう。黒海賊の襲撃を逃げ延び、 南洋の某国へと流れ着いた助左ェ門。しかし奪われたはずの財宝の 宝石のひとつを、その国のお姫様弥々姫(浜 美枝)が身に付けているのを 目撃し、事態は国を乗っ取り弥々姫をも我が物にせんとする宰相 (実は黒海賊の黒幕/演・中丸忠雄)の陰謀が絡み、かくして宰相の牛耳る 魔城へと潜入した助左ェ門の大冒険が始まる…。

 ハイこの導入だけでもう充分「カリ城」というか、もちろん助左ェ門 と弥々姫との淡いロマンスも絡めつつ、宰相の愛人草笛光子の悪女ぶり、 助左ェ門を助ける女盗賊水野久美のいつもながらのイイ女っぷりと、 お色気役若林映子の豊満なオッパイの谷間に翻弄される エロ仙人有島一郎(「ゴジラなんてへっちゃらパシフィック製薬のクスリを 飲んでいるからね、からさ? からよ?」)と宰相の後ろ盾となる 妖婆との妖術合戦など見所も多く、もちろん、ヒーロー役三船の 爽快感溢れるヒーロー像はまさに快男児そのもので、不思議な友情で 結ばれつつ対決の道を歩むライバル役田崎 潤との決闘シーンも含めて、 劇中縦横無尽のアクションで魅せてくれます。

 自分としても認めますが、「カリ城」は間違いなくアニメという 枠をも越えて認められた、我が国の生み出した 冒険活劇映画の大傑作です。ただ、その先達にはこうした邦画黄金期の 大活劇映画があったことは記憶されるべきでしょう。もちろん そうしたジャンルの原点として、本作が偉大となりすぎた後輩の 陰に隠れることなく永く語り継がれていくことを願いたい物です。


「ドラえもん のび太と鉄人兵団」

 あの百式モドキロボ 、ザンダグロスのデザインだけはとてつもなく有名な映画です。 しかしきちんと藤子F先生ご存命中に作られた映画だけのことはあって、 「仮面ライダー龍騎」よりも設定がしっかりしている鏡面世界、 世を憂いだ天才科学者がユートピアの体現として生み出したという 鉄人兵団のバックボーン、もちろん侵略の尖兵となる 萌え美少女ロボキャラに、白い巨大ロボ対侵略ロボ軍団に、 タイムマシンによる歴史改変ネタと なんとも男の子ゴコロと腐れSF好きの嗜好を揺さぶる ファクターに充ち満ち溢れた映画であります 。ただ、やっぱりコドモさん向け映画というのもあって、 せっかくのタイムパラドックス描写が 「ゴジラVSキングギドラ」 並みになっちゃってるのは苦笑ポイント。
 なんだかんだ言いつつ、 人間との触れ合いから自我に目覚め、愛した人間達のために 尊いまでの自己犠牲の行動を取るロボ美少女 ってネタは、この映画の最大の勝利ポイントかも。すんまそん クライマックスで普通にジンと来てしまいました(タイムパラドックスが 「ゴジラVSキングギドラ」並みなのに)。


「地獄甲子園」

 あの超時空漫画家、 漫☆画太郎先生の原作が遂に映像化されました。
 全国の野球少年達の夢、甲子園。だがその野球少年たちの眩しいまでの 夢をうんこ踏んだ靴で踏みにじる者たちがいた。試合中の事故に見せかけての 相手チームの大虐殺を是とする外道野球。その外道野球の具現者 外道高校チームである。そしてその外道高校との全国高校野球予選 第1試合の相手となってしまった星道高校野球部。神聖なるダイヤモンドに バイオレンスとジェノサイドの無謀の嵐吹き荒らす外道野球に対抗 できるのは、星道高校転校生、野球十兵衛の繰り出すケンカ野球、そして、 自らの父蛭子能収を死に至らしめた魔球を放つ、スーパートルネード 投法しかないっ!

 いやあ、あの漫☆画太郎先生の原作が映像で見れると言うだけでも 御の字ですが、ともかく映画全体に吹き荒れる画太郎ワールドの 再現度は バカバカしいぐらい無駄に素晴らしく、全編和歌山県で ロケとスケール的には負けてるかも知れないけど、山口雄大監督が バイオレンス、 アクション、カタルシスといった映画の重大要素に掛けた志や魂においては 「少林サッカー」にも「キル・ビル」にも負けてません

 あと、なんてってもこの映画の泣かせポイントとしては主人公の 親父役蛭子能収先生。あのニコニコした笑顔で主人公とキャッチボール に興じ(そして主人公の剛速球で殺害)、死の淵に立った主人公に 現世に帰ることを諭し、もちろん大空にあのニコニコ笑顔を浮かべて あの世から主人公を見守る様は、もう 「スーパージュッキー」の熱湯コマーシャルでもこんなに泣かせる 蛭子先生は見たことないです(感涙)。そう、 蛭子先生のタレントとしての魅力を引き出せたのは 世界の北野 武でなく漫☆画太郎と山口雄大だったということやね (すんまそん)。

 あと、この映画の制作に協力したのは、ジャーン 和歌山県教育委員会。和歌山県は子供達に漫☆画太郎先生の 漫画を推奨したぞ! なんてイイ県なんだ和歌山県! オレもなんか ヤバいことやって地元に住めなくなったら、和歌山県に夜逃げしよう!


「江戸川乱歩の黄金仮面U/ 桜の国の美女」

「乱歩R」(日本テレビ系、03.1月〜3月)終了記念鑑賞。
 以前「フィギュア王」誌の巻末漫画「人形人間の逆襲」(ほりのぶゆき 著)でネタにされていて、無性に再見したくなっていたのですが… まさかと思ったらコレだけビデオ化されてました(万歳!)。70年代〜 80年代にかけて少年期を過ごした、いわゆる 現行ヲタの中心層世代にとって、明智小五郎といえばもはや 故・天知 茂しか思い浮かばないでしょう。自分も数年前、突然乱歩 にハマり狂って作品を読み返しても、文章の中での明智の顔は脳内で常に 天知 茂に変換されていました。そんな天知エイジにとっての バイブル映像、「江戸川乱歩の美女シリーズ」を再見できる機会に 恵まれようとは感無量でありますです。

 天知エイジにとってもはや言うまでもありませんが、この「美女シリーズ」 は毎回徹底した様式美(必ず明智が劇中一度死んだと思われるとか、 突然意外な人物が変装を解くと生きていた明智でしたとか、たとえドカチン ルックに変装してようが その下は必ず背広とか、事件の根幹に近付く無名の 女優は オッパイ全露出で殺されるとか…etc.)に基づいて作られている ドラマであります。しかし、実はある意味これほど江戸川乱歩の原作に 忠実な映像化もありません。乱歩作品の表層的な特徴をあえて括れば、 真っ向からの エロがあり グロがあります。そして「美女シリーズ」で言うなら、 たとえば崖下に落ちて死んだ伊吹吾郎( 劇中では実は偽物)の特殊メイクによる眼球剥き出しグチャ潰れ顔面 だったり、ドライバーで眼球を抉り出される伊東家のお父さんだったり、 もちろん無名の女優さんの オッパイ全開と、乱歩作品の映像化数あれど、これほど 乱歩作品の魅力を理解し全肯定して作られたシリーズもないでしょう (笑)。そしてもちろん、 理知的でありつつ悪に対する苦渋と怒りを奥様も よろめくダンディズムを漂わせ体現していた故・天知 茂の魅力も 忘れがたく、シリーズ全作品のソフト化が密かに待たれるシリーズ でもあります(当時の小中学生にとって、もちろん オッパイ全開に代表されるエロさこそ…苦笑)。

 ちなみに自分が今一番再見したいのは、前述の伊東家のお父さんが 人見広介を演じた「パノラマ島奇談」。見たのは小学6年だか中1だかの 頃だけど、未だに忘れがたいですよ…おかげでポプラ社の「少年探偵団」 以外の乱歩作品で、初めて読んだのも「パノラマ島奇談」だし。

 あ、「黄金仮面U」、古手川祐子の父御手洗博士の所蔵する絵画を狙う 黄金仮面の正体伊吹吾郎が、何故名前がロベール? 吾郎なのに 角刈りなのに何故にロベール? あまつさえ大月ウルフに変装 しているのにどうしてロベール?? ザッツ吾郎! ザッツ吾郎!  いやあ、やっぱり「美女シリーズ」は不思議な魅力の作品であります。


「独立愚連隊」

 嗚呼っ…何故に私はこうして創作を始める前に、意識して岡本喜八監督 作品を見なかったのでしょう…? いやあ、ひたすらおもろかったって 感想しか出てこない映画であります。大東亜戦争末期の北支戦線、 その最前線で戦い続ける一兵卒たち、私腹を肥やす恥さらし軍人、 日本での商売を夢に稼ぎ続ける慰安婦たち、そしてギラギラした笑顔も 眩しい従軍記者である主人公我等が佐藤 允兄貴(自分にとっては 「直撃! 地獄拳」での千葉ちゃんの相棒役が印象に濃いですが)と、 どいつもこいつも不貞不貞しいまでに生き汚く、過酷な環境も笑い飛ばす 鮮烈な生き様を、銃弾と爆風飛び交う 戦場で見せつけてくれます。もちろん恋あり、笑いあり、戦友同士の 友情ありと、映画のおもしろさを濃厚にスシ詰めにした見てて 飽きるポイントなしという一作。
 うぅ、旧作日本映画のコーナーをわざわざ作ってくれてありがとう 地元のTUTAYA。今さらですが、岡本喜八監督作品は今後も 少しずつながら追っかけてみる予定。

 

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