映画えっちほー12


「マッハ!」
「半落ち」
「劇場版 機動戦艦ナデシコ」
「ドラえもん のび太のワンニャン時空伝」
「キューティーハニー(サトエリ版)」
「ブルークリスマス」
「CASSHERN/キャシャーン」
「ノストラダムスの大予言」
「緯度0大作戦」
「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」


「マッハ!」

「少林サッカー」のメガヒット以降、アジアンアクションムービーが大挙して 日本に押し寄せてちょっとしたブームを築いていますが、「マッハ!」は、 実はある意味特撮ファンの琴線に触れる映画であります。
 映画のストーリー自体は、タイの片田舎の村から仏像の首を奪った悪党を 追って、村一番のムエタイの使い手が都会に赴くという以外の何者でも ないんですが、映画の宣伝どおりワイヤーもCGも頼らない主演トニー・ジャー のアクションは 本気で必見であります。
 さて、ただ筋肉が暴れまわるだけの映画をあーだこーだ言うつもりもなく、 この映画の最も語るべきところはタイの人々の仏様に対する信心と仏罰の コワさ…。これだけ爽快な映画ながら、オーラスでは悪党は巨大仏像の首の 下敷きとなり、当初主人公に非協力的な立場を取って仏像の奪還にヤル気を 見せてなかった主人公の友達は最終的に悪党の手にかかって殺害と、 爽快どころか重悲しい余韻を残して映画終わっちゃう…。そう、 言うなれば「ウルトラ6兄弟対怪獣軍団」で、子供が変身したハヌマーン にただの仏像ドロボウたちがグシャッて踏み潰されるシーンみたいなヲイヲイ さ(汗)。
 ガキにハヌマーンへの変身能力を与えたウルトラの母も、やっぱり仏様を ないがしろにする奴は怪獣だろうがただのコソ泥だろうが許さんということですか 許さんのですかっ!? この2本の映画に込められた共通にて最大のメッセージは、 仏様をないがしろにするととんでもねーバチが当たるぞってことなんですな (なーむー)。


「半落ち」

 優秀なる警官が、アルツハイマーに苦しむ妻の「殺してほしい」との懇願に やまれず妻を殺害、警察に自首する。しかし自首は妻を殺害してから三日後の ことだった。空白の三日間をかたくなに黙秘する警官。県警はマスコミ対策と して、その三日間の捏造を目論むのだが…。
 いやあ、この映画には普通に感心させられたというかやられた! と思った ですよ。ミステリ的な導入で観客の興味を引っ張りつつも、醜聞を恐れる 警察内部の陰謀と担当捜査官である柴田恭兵の駆け引き、そして寡黙さを貫き 物語の間をたゆたう犯人役寺尾聰の苦渋を滲ませる演技と、演出、脚本との バランスが並大抵じゃない。ドカンと爆発的な派手な展開があるわけでも ないのに、じっくり最後まで見てしもうたです。
 なんだか気持ち悪いぐらいベタ褒め感想で申し訳ないですけど(本来、ただ ベタ褒めだけなら映画感想なんかやる価値ない)、この演出の妙は自身の中の 物語作りの引き出しを増やすためという意味でも一見の価値はあると思います。 鑑賞後の面持ちも爽やかになる、良い映画でありましたです。


「劇場版 機動戦艦ナデシコ」

 ある意味「エヴァ」と並ぶ90年代のメカアニメの代表的作品の劇場版…って、 前世紀のうちに公開された映画、2005年の今日に至ってやっとのことで見て しまった(汗)。
 新キャラである弟分ハーリー君(声、日高のり子)を従え艦長として 成長したルリルリ。テレビ版の最終回が報われないぐらいハードな 人生を歩んで復讐鬼と化したアキト。見ていて思わず手を叩くぐらい 相変わらずさで頬を緩ませるナデシコクルーの面々と、1時間半に満たない 短い尺ながらなかなかに楽しませてくれましたです。
 さて、実は問題なのは、映画自体は初見なのに物語自体は見る前から 完璧に頭に入っていてしまったこと…。前述の「尺の短さ」故か、 「スーパーロボット大戦MX」ではその展開が ほぼ全部ベタに入ってたんですな。
 自分のセーブデータでは、劇中の悪役北辰を倒すのはアキトのブラックサレナ でなく闘将ダイモスだったりしますが(笑)、映画を見たかぎりでは まあそれでも良かったかと思ったり。あと、劇場版オリキャラである ラピスの声が今となっては笑っちまうところというか、いやあ、ナデシコクルー 相手に「お前たちは私の生徒だ!」ってタンカ切るシーンがかっこよかったなあ (←そんなシーンありません)。
 なんにしろ、ドメル戦法のワンアイデアだけで映画1本 作ったという意味でも、70〜80年代からのアニメファンとしては拍手モノで あります(笑)。


「ドラえもん のび太のワンニャン時空伝」

 2005年春にかけては「ドラえもん」の声優交代のニュースがヲタ層一般視聴者層 問わず大ニュースとなりましたが、その旧声優の方々による最後の「ドラえもん」 映画であります。
 元より原作者の故・藤子F先生がSFに造詣の深い方であり、そのSF的 アイデアの多くが「ドラえもん」というセンス・オブ・ワンダーな世界を 築き上げたとも言える訳ですが、藤子F先生没後もその「ドラえもん」に対する 姿勢は後を任されたクリエイター達に託されていたというのが実は如実に 現れている映画。序盤からして直接本筋に関わらなそうな複線が張り巡らされ、 それがタイムマシンによる“枝分かれした進化論を辿った歴史”、“時間流の 迷子”、“異なる進化論の創造主”などといったSFガジェットを経て、 少年の友情物語として結実する様は、物語的な快感と共に巧みな物語構成に 唸るところであります。
「ドラえもん」って、タイムマシンを扱った割に実はタイムパラドックスの描写が 案外いい加減な話も多いのですが(苦笑)、これは普通に 漫画映画というだけでなく、実は我が国が輩出した時間モノSF映画と しても世界中どこに出しても恥ずかしくない出来となっております。単に 旧声優さんメモリアルとしての視聴でも構いませんが、多くのSFファンにも 広くお勧めできる映画と、ヘタレな映画ファンとして太鼓判を押しておきます。
 長大過ぎる時間を越えた友情物語…それだけでも充分泣けますですよ(感涙)。


「キューティーハニー(サトエリ版)」

 2004年の邦画界は、何故か漫画やかつてのTVアニメ原作の映画化がやけに 流行ったのですが これもその1本。今をときめく佐藤江梨子主演にヲタ系カリスマ監督庵野秀明 監督作品ということで結構話題になりましたが、自分としては大して期待もせず 見てみたのですよ。

 ノリノリのOPアニメに、下着姿で商店街を駆け抜ける(まさに原作者永井 豪先生の世界!)サトエリの根性座った演技ですべてを許す気になれました。

 正直、「キューティーハニー」という漫画の映画化としてはどうかという点も 見受けられる出来ではありますが、ある意味サトエリ以上にノリノリな片桐 はいりに及川光博といったパンサークローの怪人軍団もよし(笑)。何より、 この映画見て以降自分の中でテレビでサトエリを見る目が もの凄く変わりましたので

 佐藤江梨子というタレントをとてつもなく魅力的に撮ったという意味、 庵野カントクも単なるヲタ映像監督としてだけでなくまだまだやれるなと ちょっとだけ評価を上方修正。サトエリのヒップドロップに、ゲスト 出演者永井豪先生もビックリだ(笑)!


「ブルークリマスマス」

 惜しくも物故された岡本喜八監督が、仮にもUFO を題材に撮った1本。しかし画面上一度も肝心のUFOを見せずにUFO による脅威を描ききってるのは、実は下手にCGだのSFXだのを駆使した 侵略モノSFが問題にならないほど優れた演出というか(←ちょっとだけ嫌味)。
 この映画で描かれる恐怖は、実はUFOそのものよりUFOによる影響で 発生した事態に対する、目に見えぬ為政と謀略の恐怖ということになるんですが、 ここでこの映画の秀逸なところは、単純に謀略を追う者に視点を偏らせず( それだと単に「Xファイル」になっちゃうし)、謀略のために手を染める者の 視点と苦悩を盛り込むことで、物語のクライマックスに至る悲しみを 増長させているとも言えますです。ただ、決して別に岡本喜八が 撮らなくてもいい映画なんですが
 倉本 聰がこの映画の脚本書いたあと北海道に引きこもったのは、ひょっとして 劇中堂々と「アダムスキー型円盤」と台詞で言わせちゃったのが恥ずかしかった からか? ただどんな特撮モノでも見れない岸田 森と天本英世のツーショット が見れるという意味では素晴らしい映画であります(笑)。
 まあ、自分みたいに「Xファイル」を最後までレンタルして視聴したなんて 人間には、謀略モノとしてそこそこ楽しめましたです。


「CASSHERN/キャシャーン」

 2004年の邦画界TVアニメ原作映画化シリーズ。公開当時は「宇多田ヒカルの ダンナが嫁の稼いだカネ使って撮った勘違いオッサレー映画」とさんざな 酷評を受けた1本でしたが(自分も見もせんと悪口言い散らかしてた)、 実際見てみると、CGによる美術設定のイメージの幅の広さは本当に見どころで、 実は驚かされます。
 あの三日月メット(太陽エネルギー集光装置兼超破壊光線砲)のない キャシャーンが嫌で嫌でたまらなかったはずなのに、ツメロボ軍団との 初戦、かつてのアニメ同様キック! アタック! 電光パンチ! と、縦横無尽に 宙を舞い、生まれ変わった不死身の身体を駆使して 燃える怒りをぶちかましていく様は、マジ鳥肌立つぐらいかっこいい ! ここでのドリルキックを見るためだけでもというか、 実は画像的には見るべき部分は多すぎるぐらい多く、純粋に特撮好きな映画 ファンの目を楽しませてくれる分には秀作であります。
 ただ…やっぱりかつてのアニメをオッサレーに勘違いしまくった点は、 タツノコアニメ世代としては本当に批判すぎるぐらい批判しなきゃならない 映画。父親の汚名を晴らすため、あるいは父親の不名誉のカタを着けるためという 自己犠牲の精神で「たったひとつの命を捨てて、不死身の身体に生まれ変わる」 のかキャシャーンという尊い意思を持ったヒーローのはずが、こちらでは終始妻の 病気を治すためという意思でしか行動しない父親の狂気に付き合わされる 形で新造人間にされてしまうという出生から間違っていたというか…。 挙句にはブライキング・ボスでさえその親父の狂気による犠牲者だった ことが暴かれ、ラストのオチはキャシャーンが親殺しの 業を背負った上で一家心中(←ネタバレ反転)って…はあぁ。

 ラストに延々と説教くさく流れる、幸福な回想シーンの羅列がこの物語の未来に 幸福がないことを見ていてイヤになるぐらい暗示してくれるというか、まあ デストピア物が好きな人、オッサレーな画像と宇多田ヒカルの主題歌に ダマされる女子若造にはいいかも。そもそも宇多田ヒカルの歌にダマされる 観客層が、かつてのTVアニメ版なんか絶対見る訳 ないし
(できるだけ偏見を捨てて、この映画のいいところを語るつもりだったのが… 2005年3月にNHK衛星放送で放送された「BSアニメ夜話」で、わざわざ 「新造人間 キャシャーン」を題材に取り上げた岡田斗司夫の気持ちが少し判りました。)


「ノストラダムスの大予言」

 ちょっと視聴したビデオの出所を公に出来ないヤバめの映画シリーズその1。
 そういうことで長年この映像を見るのを心待ちにしてましたの「ノストラダムス の大予言」です。世界中に、まるでこの世の終わりとも思える絶望的な 異常事態が続々発生。丹波哲郎先生演じるえらい博士は、 先祖代々伝わるノストラダムスの著書「諸世紀」に綴られてきた予言を 元に世界中に警告を発していく…。いやはやこの映画自体のキワモノさを抜きに しても、実はその謳っているテーマ…「後戻りできないまでの物質文明に依存し 続けるかぎり、人間の精神の絶望的な後輩と滅亡への道は逃れることは出来ない」 というメッセージそのものは、この21世紀の世に至っても真摯に語り継ぐべき 映画と思うんですな。
 巨大ナメクジ出現だの異常に高くジャンプできる小学生出現だの 木に登って童謡を口ずさむ官僚出現だのといった、 世界的なスケール描かれるなかなかかっとんだ絶望的状況云々を 描ききった中野昭慶特撮も冴え渡り、スタジオを火事にしたというによる 爆発特撮のスケール感については このシーンのためにこの映画を見ろ! と断言してはばかりません。

 …しかし、現在この映画が公開できない理由の最たるものの、 未来世界のミュータント…こんなもんのどこが公開できない 理由だよ。今時あんなもんよりよっぽど映像的にタチが悪いクリーチャーなんか ゴロゴロしてるっつーのとの憤りを問題の画面から感じ取ったのですが (苦笑)、やっぱり平成の仮面ライダーが改造人間でないのと同様 「人間がグチョグチョになる」ってのが倫理上引っかかる理由なんですかね?
 ラスト、丹波先生が黒沢年男と由美かおるを引き連れて国会議事堂を後にする シーンがやけに威風堂々としてカッコ良かった。こういうあたり、邦画界を 引っ張ってきた大物俳優の存在感をさまざまと認識しますですな。

※この映画については、前述のとおり「視聴したビデオの出所を明らかに 出来ない(違法云々とかでなく、ご厚意にてダビングしてくれた方への仁義のため)」 」という事情がありますので、たとえ個人的なご依頼としてもダビングは 了承しかねますのでご理解ください。


「緯度0大作戦」

 ちょっと視聴したビデオの出所を公に出来ないヤバめの映画シリーズその2。 まあ、この映画がソフト化できない理由は単に俳優がらみの契約関係なんです けどね。
 そういうことで、一般的には幻の名作扱いとなっている映画ですが、 内容的にはいつものメカと怪獣を絡めた東宝特撮 ですので、過剰な期待はしなくていいかもと思います( 実際に映像見た自分かが言うのもなんですが)。ラストの、悪役の根城 ブラッドロック島大爆発のシーンについては「レインボーマン」26話で 見れるので、それだけでも見たいという方はそちらをチェックしてください。
 しかし、映画本編の特撮について…冒頭の円谷英二特撮による海底火山噴火の シーンですでに感涙…。ホリゾント貼り付けた水槽にコーヒーだの墨汁だのを 垂らして噴煙を表現し、それをカメラ逆さにして撮ったって判ってる、 判ってるんだけど…そうして描かれた噴煙の大迫力に「特撮の神様の真髄」を 見た気がして、画面に向かって拝みそうになったであります。嗚呼、機会が あったら是非とも劇場の大画面で見てえっ!
 主役メカとなる万能潜水艦α号関連の描写を目で追ってみても、VTOL のごとく水中を自在に垂直機動できるあたりとか、いかに 「ふしぎの海のナディア」がパクったかよく判るというか…
 劇中登場する怪獣らしい怪獣、グリフォンは 堂々と人間の脳を組み込んだ怪獣という描写(泣き叫ぶ改造被験者を拘束の上 改造するシーン!)がなされ、これも「東宝怪奇人間 シリーズ」的な、人間の尊厳をモンスターの肉体に閉じ込められる悲惨さを 描いた映画の系譜に収められるのかもしれません。もっとも、映画そのものの 雰囲気がかなり脳天気なので、そんな感慨を抱くのはわっしみたいな あほな怪獣ファンぐらいですが(苦笑)。
 ともあれ脳天気な映画内容はともかく、紹介したよりも映像的にイイ要素も いっぱいであります。ああっ、α号操舵手甲保役、大前均に惚れこみそうだ…。 α号艦内にある 記念プレートを見ると、今年(2005年)はα号就役200周年アニバーサリー じゃねえか(笑)!

※この映画についても、前述のとおり「視聴したビデオの出所を明らかに 出来ない(違法云々とかでなく、ご厚意にてダビングしてくれた方への仁義のため)」 」という事情がありますので、たとえ個人的なご依頼としてもダビングは 了承しかねますのでご理解ください。


「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」

 摩天楼を進撃する巨大ロボ軍団。「スカイキャプテン応答せよ」のコール サインと、それに応じて巨大ロボに立ち向かう、我等がヒーロー スカイキャプテンとその乗機P−40。
 …予告などの段階で提示されたこれらのビジュアルに期待しない訳もなく、 そして遂に視聴した本編は…力押ししか脳のない考え無しのバカなヤンキー が、輪をかけてバカのヤンキー女に翻弄されてバタバタしてるだけの、 「そりゃねえだろ」ってぐらいのダメ映画でした…orz。
 これは「CASSHERN/キャシャーン」にも言えるんだけれど、いくら 素晴らしいビジュアルを生み出す才能を持つ奴がいても、肝心のストーリー と演出がその才能を台無しにしてしまっており、非常にもったいない映画で あるなと思います。
 とってつけたようなラブシーンなんかこの映画には不要のはずとも 思えて、あえて言えば、ヒロインであるバカヤンキー女の存在を廃した 「男の映画」として作っていれば、この映画に対する評価も相当変わったはず。 バカな女に駄目にされた、不遇の「男の子向け映画」として認定。



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