映画えっちほー10


「ゆうれい船(前・後編)」
「独立愚連隊西へ」
「サクラ大戦 活動写真」
「ゴジラVSデストロイア」
「アンダーワールド」
「怪人二十面相」
「ジョニー・イングリッシュ」
「電送人間」
「美女と液体人間」
「野生の証明」


「ゆうれい船(前・後編)」(57年、監督/松田定次)

 当時の朝日新聞に連載されていた大佛次郎の冒険活劇を、東映が 映像化した作品です。時は足利将軍を倒して独裁者となった松永弾正の 時代、父の乗った商船が行方不明となったことを機に、侍となってひと旗 上げようと京の都へとやってきた少年ルーク・スカイウォーカー (中村錦之助) は、松永弾正ら帝国の悪業を憎む、レーア姫(長谷川裕見子)と ハン・ソロ(大友柳太郎)に出会った。帝国の支配を前に決起した 反乱軍の百姓一揆を圧倒的な武力で蹴散らし、さらにレーア姫を捕らえる 帝国軍。義のためにハン・ソロと共に立ち上がったルークの 大冒険が始まる。レーア姫を無事救い、海へと逃亡するルークたち 一行。だが、その彼等の目前に現れる謎のゆうれい船。それは、ルークの 父が乗っていたはずの船、観音丸…!(ここまでが前編)。

 …というわけで、ハイ実はルーカスやスピルバークがやってたことは 単に普遍的な冒険活劇に過ぎなかったことが実証されたというか(笑)、 いやあハリウッド大作を妄信的に褒めちぎる人間は、黄金期の邦画を もっと見なさいと。
 肝心の映画のほう、実は錦之助演じる主人公の坊ちゃんぶりと 鼻にかかった裏返った声がなんか生理的嫌悪を誘ったりするんだけど、 その分錦之助を助けるハン・ソロやアラゴルンといった役柄の、 大友柳太郎のナイスガイ ぶりが強調されててなんともかっこいい。やっぱり主人公が未熟な 少年という映画には、主人公を助け導くいい大人、ナイスガイな青年 ヒーローの存在が輝くです。
 さて後編、目撃したゆうれい船の謎を追う錦之助たちは、南海の孤島に 築かれたユートピアと、それを狙う海賊達からユートピアを守るために 戦うことに…って、帝国軍や独裁者はどうしたんだよ!?(いえタイトルから すればこの流れで正解なんだけど)


「独立愚連隊西へ」

 さあさあまたまた来ましたよ。岡本喜八監督と、すっかりファンとなって しまった佐藤允兄貴の映画だ! いえ実質的な主役は加山雄三 なんだけど。
 舞台はまたまた北支戦線。例によって例のごとく無理難題な 危険任務を押しつけられた加山雄三隊長の小隊(佐藤允兄貴含む)が ハチャメチャに戦場を駆け抜ける。今回目立つのは脇役達の個性 溢れる存在感。愚連隊と不思議な交流で結ばれる支那軍隊長の フランキー堺のコミカルぶりに、愚連隊を襲う狂気のゲリラ隊長 天本英世。そして戦地で度々愚連隊の面々を助ける基地慰安所の主人、 中谷一郎の佐藤允兄貴に負けないギラギラっぷりは、映画のもう一方の ヒーローとして存在感が際立っております。紅一点、水野久美の 存在感が霞むほどに(苦笑)。
 現代となっては戦争映画といえば戦争の悲劇を強調するものという 空気が出来上がってしまい、こうした痛快な戦争アクション映画 というのはほとんど(てーかまったく)作られなくなってしまいましたが、 この映画はまさに「戦争を知っている世代」の方々が作り上げた 映画として決して否定の対象にはなり得ないし、「戦争を知らない世代」 が戦争映画を作るにおいて、戦場の様々な側面を写し出すという意味でも “痛快な”戦争映画ってのは、あったっていいはずなんですけどねえ。


「サクラ大戦 活動写真」

 NHK BS−2の夏休みアニメ特集で鑑賞。アニメ版「サクラ」 って初めて見たというか、何故に国営放送にてヲタ向け萌えアニメの 象徴みたいなのを…(いえ土曜の朝に「うる星」の再放送とかやってる んですが)
 さて、仮にもセガサターンとドリームキャストのユーザーであり いっぱしのセガファンを気取るわっし本人の「サクラ」体験として… 実はわっし、PS2版が発売された現在においても、「サクラ」って まったくやったことない(汗)。 唯一持っているソフトが、何故か 巴里歌撃団の活躍を描いた「サクラ3(ドリキャス版)」。だって ヒロインの声が日高のり子なんだもん(2004年夏現在、未だ積みゲー)。
 ここまでわざとらしい「サクラ」ビギナーといえど、「サクラ」記事が 充実しまくっている(それしか売れ線コンテンツがない…)雑誌「 ドリマガ」にて、記事情報として「サクラ」関連の諸設定は頭に インプットされてます。情報社会の世の中万歳。さて、肝心の映画の 内容ですが…。

 うーむ…やっぱりコレは国営放送向きの題材の映画じゃなかった、と いうのが開始10分での感想。良くも悪くも、諸設定を理解している上で 楽しめるファン向け映像に徹しているというか…光武の出動シーンとか、 男の子心をくすぐりまくるメカ描写がかなり格好いいんだけれど。
 映画の内容的には参入してくる新メンバー→メンバー間の衝突、 渦巻く陰謀、チーム解散の危機→努力、友情、再結束による逆転勝利 …という王道的内容で、まあ確かに誰が見ても楽しめる劇場用アニメ という条件はクリアーしておりました。
 こうして、まあそこそこ良くできた劇場アニメだったのおという印象の まま終わると思いきや、ラスト、約10分に渡る大歌劇シーン…。あー、 なるほど、確かにこのクオリティーなら国営放送向きだ! こういう あたりでやっと国営放送の眼鏡にかなった理由を納得しましたというか (おせーよ)、まあ多くのゲーム、アニメファンを取り込む パワーを今さらながら垣間見たです。
 こうなったら、あとは肝心のゲーム本編を始めるだけなんですけどね (ふっふっふ…)。


「ゴジラVSデストロイア」

「ゴジラ ファイナルウォーズ」事前、先立ってゴジラが死んだ映画 勉強鑑賞。さて数年振りに見てみると、バース島(柄本明がナマ身ひとつで ゴジラと戦っていた島)の消滅に始まり、体内原子炉が暴走したゴジラの 香港上陸。天才科学者伊集院の発明に、かつて芹沢博士が命を賭して 葬ったオキシジェン・デストロイヤーの影を見る山根恵美子(第1作 ヒロイン)。そして新都心に出現する謎の怪生物。導入部に用意された 様々な伏線が、ゴジラのメルトダウンという衝撃的なクライマックスに 向けて一本に収束していく様は、実は公開当時科学的設定の出鱈目さを イロイロツッ込まれていたという事実を鑑みても充分面白い。

 ああそうか、数々のゴジラ映画が後年になって再評価を受ける という現象同様に、この「VSデストロイア」も10年寝かせて置いて 改めて美味しさ(魅力)が見えてくる映画だったのですな。

 敵怪獣デストロイアも、オキシジェンデストロイヤーの属性を持っている というゴジラの天敵(ライバル、という意味ではなくて)的設定が 実にオイシいし、デザインもガイガン、メガロから連なる超獣(恐獣) っぽい趣があってなかなかカッコええ。これで末路がスーパーX3に 撃墜されるでなく、ガチでゴジラに気持ちよくぶっ飛ばされてくれれば よかったのにね。
 なんだかんだ言いつつ、ゴジラが荘厳に最後を迎えるクライマックスは やっぱり必見です。北村龍平(「ファイナルウォーズ」監督)が はたしてかつてのこの名シーンに対して、如何なる方法でゴジラの姿を 観客の前から消していくのか? イロイロな意味で興味は尽きないです。


「アンダーワールド」

「マトリックス」以降の映画の定番、 黒いレザースーツ着たお姉ちゃんが二丁拳銃バンバン撃ちまくって ワイヤーでビュンビュン飛び回る映画 です。
 ひとつヒットした映画が出れば、そのエピゴーネンは数多く登場 するのは世の常ながら、観客側からすればビジュアル的に非常に判りやすい のでビデオ屋の棚から選びやすいです。この映画ではさらに世界観に 吸血鬼VS狼男という血族同士の対立を縦糸に通したことで、凡庸な エピゴーネンにはせんぞという製作側のやる気が見てとれるところは 好感ポイント。ただ…残念ながら多くの観客は今更 CGでの吸血鬼や狼男の超能力、変身表現 などには驚かなくなってると思いますので、どうしても前述の 黒いレザースーツ着たお姉ちゃんが二丁拳銃バンバン撃ちまくって ワイヤーでビュンビュン飛び回る映画 とだけしか見られないかも。
 ひとつ映画のヒット作が出来たとしたら、そのオリジナルを超える 物を作るのは非常に難産。そんな感慨も持つ映画ですねえ。(画面 を闇一色で統一した作品カラーとか、本当にがんばってる映画なのに)


「怪人二十面相」(54年、監督/弓削 進)

 これまたWOWOWにて鑑賞。三部作による連続活劇です。
 第一部「人か魔か?」にて二十面相、羽柴博士の持つ 超原子炉の設計図を 狙って予告状送付。折りしも我等が名探偵明智小五郎は渡米中につき 日本にいない。僕ら少年探偵団の出番だ! イロイロあって結局設計図と 羽柴博士所有の観音像は二十面相の手に落ち、ひみつのアジトにて高笑いする 二十面相。だがそのとき、観音像の中から颯爽と現れる、我等が名探偵 明智小五郎! 設計図を奪還したものの、二十面相の仕掛けた落とし穴に ハマり、水攻めに処されてしまう。嗚呼、果たして明智探偵の運命やいかに !?
 そして第二部「怪人対巨人」冒頭にて、いざという時のために用意していた ハイテク装備携帯モールス信号発信機 にて警察と少年探偵団を呼び、 難を逃れる我等が明智探偵(ってオイ)。二十面相を追い、ついに滝の 上にて対決のときを迎える宿命の二人! なんとなくホームズ対 モリアーティ教授入ってるが気にするな。しかし我等が明智探偵は バリツを習っていない! 返り討ちにあって 滝壺へと堕ちる明智探偵! その間にも二十面相はなんと明智探偵の名を 騙り、悪事のしたい放題だ。だが、だが、だが、我等が明智探偵は 天知茂も演じていた通り無意味に不死身だ!  復活した明智探偵は手始めに二十面相の第二のアジトを突き止め、 アジトからの撤退を余儀なくされてしまう二十面相。日本の未来を担う 超原子炉のひみつを巡り、我等が名探偵と怪人との最後の対決は第三部 「怪盗粉砕」へと雪崩れ込んでいく…いやあ、
 あらゆる意味でおもろい映画でした。
 はいツッコミどころ満載という意味で。いえ半世紀前の、児童向け プログラムということで、各40分程度の尺の中でせわしく展開する 内容など、視聴するお子さんを飽きさせないという意味ではいい演出かも。 個人的には、二十面相自ら語る、過去明智に火星ロケット 設計図強奪を妨害されたくだりも是非映像化してもらいたかったと (爆笑)。

 バリツ…ホームズが習得していたという日本の伝説格闘技。詳細は 大槻ケンヂ兄貴著「わたくしだから改」(集英社文庫)にて


「ジョニー・イングリッシュ」

 日本では数年前NHKで深夜に思い出したように放送されていた コメディー「Mr.ビーン」で一躍有名となったローワン・アトキンソン 主演によるスパイコメディー映画です。しかしローワン・アトキンソン の過去の映画出演作では「ラットレース」という あまりにオチがお粗末すぎる愚作があります。それでも、 ローワン・アトキンソンということで少しは期待してレンタルして きたのですが…。
 結論、ローワン・アトキンソンを映画に使う監督は ローワン・アトキンソンを喋らせるな。
「Mr.ビーン」は無言劇スタイルとローワン・アトキンソンの身体を張った ボケっぷりが、何も考えずに見てるにはえれー面白かったのに、  ローワン本人が喋りだした途端に 単なるレスリー・ニールセンの映画(「裸の銃を持つ男」シリーズなど) になっちゃってるんですな。ドリフ並みのギャグは、気にいる人には いいかも知れないけど凡庸と言っちゃえば凡庸だし、正直 ひとりで見ててもつまらん映画だった…。
 まあファミリー向け映画として、テレビ放映で家族そろってお茶の間で 見るには和める映画であります。ともあれローワン・アトキンソンには そろそろ「Mr.ビーン」の頃の、コメディアンとしての自己のスタイルを 取り戻してほしいでありますです。


「電送人間」
「美女と液体人間」

 今川泰宏監督版「鉄人28号(2004年放映)」、「光る物体」「怪盗ブラック マスク」見ちゃったから鑑賞。いえ実際見ちゃうと、今川監督版 「鉄人」が、いかにこれらの作品やその他「怪奇大作戦」など、 戦中の狂気が平和な時代において、世界を脅かす影となる というフォーマットの作品群を目指しているのが判ります。
「電送人間」、戦中、上官の裏切りにあい殺されかけつつも奇跡的に 生き延びた男が、協力者の博士の作った物質電送機にて今はブルジョワ となった当時の上官たちに次々と復讐を遂げていく。「美女と液体人間」、 外洋で原爆実験の放射能を浴びた漁船 第二竜神丸の船員たちが液体人間化、 東京に侵入し次々と人間を襲い吸収していく…。興味深いのは、 人外の存在と化した彼等が心までフリークスと化し、人間の法に 収まらない存在となってしまう描写…まあもっとも液体人間のほうは 既に人としての知性を失っているというのがあるんだけれど、電送人間 に至っては劇中「血管の代わりに電線が、血液の代わりに電流が流れる悪魔」 とまで称されてしまってます。
 人としての肉体を失い、自然界の法則に存在しない異形となってしまった 彼等は、果たして静かに崩壊していく世界の象徴なのか? 「透明人間 (54年)」から始まるこれら「東宝変身人間シリーズ」は、実はこれらの 作品に続く「ガス人間第一号」でテーマの集大成と帰結点を迎えるんだけど、 この映画については自分の中であまりに特別な一本 なので、またいずれ改めて、腰をすえて書くこととします。

 …さて、映画の紹介の割にはなんか内容的にまったく語っていない 気がしないでもありませんが、ともかくこの二作品については通して ヒロイン役を演じる白川由美のエロさ に尽きます(卑笑)。二作品とも非常にアダルティーな演出で 撮られた映画なんだけれど、白川由美の下着姿も晒す 根性が俄然これらの雰囲気に貢献し見応えを与えております(断言)。

 あと、これだけはどうしても書いておきたいのですが、「美女と〜」の 原作者としてクレジットされている海上日出男氏は、「地球防衛軍」等にも 出演されたれっきとした東宝大部屋俳優の方です。 惜しくも57年に逝去されていますが、端役として映画に携わりつつ、 まがりなりにも映像化される原作を書かれたという意味、個人的には クリエイター的な憧憬をも覚えるのですな。


「野生の証明」

 さて、ダラダラと小学生の読書感想文並みの内容ながらも、ついに「映画 えっちほー 記念すべき100本目 」です。このアニバーサリーに相応しい映画は何かと考えながら いつもの地元のレンタル屋「ビデオ1」の棚を物色したのですが、 「ここはやはり 自分が生涯一番好きな映画か? いややっぱり 公開当時気になってたけど結局見ないまま20年経っちゃった映画の ファーストインプレッションがよかろう 」と、このタイトルを選ばせていただきました。世間様的には セガールもかくやという主演高倉健のアクションと 薬師丸ひろ子のデビュー作 ということで名を馳せていますが。
 アメリカ大使一家を人質に取るテロリストも一瞬で全滅させてしまう 自衛隊特殊部隊のメンバー健さん。だが民間人との接触を立った山中での サバイバル訓練中、偶然にも麓の集落で発生した ヤバいのやっちゃって正気を失った親父の村民大ジェノサイド の現場とエンカウント、やむを得ず親父を始末する健さん だったが、一部始終を目撃した親父の娘薬師丸ひろ子はショックで 記憶障害、特殊部隊を辞めた健さんに引き取られて二人、誰も自分たちを 知らない北の大地へ…。
 だが集落大量虐殺の犯人を健さんと執拗に付け狙う刑事夏八木勲の 出現、更に権力を嵩に殺人も厭わない地元のボスにまで目を付けられ、 その権力の前に立ち塞がろうとした健さんの周囲の人々が次々と撃たれ 倒れていく…。 愛娘薬師丸ひろ子を守るために、倒れていった人々のために、健さんの 怒りの炎が静かに燃え上がる後半…ついに特殊部隊上がりのフルメタル 任侠、健さんの逆襲が始まる(来た来たぁっ!)!
 ともかくこの映画での健さんは、本当にセガールとタイマン張れる ぐらい強い強い! 地元ボスの暴走族ドラ息子、舘ひろしなんか トマホークブーメラン一閃 で瞬殺。健さん抹殺に動き出したかつての同僚、特殊部隊のメンバー 達も「バトル・ロワイヤル」もかくやの ルール無用の残虐ファイターぶりで次々と返り討ち虐殺。元上官 松方弘樹の乗るヘリだって小銃一丁で 撃ち落す! やっぱりというか、静かに怒りをたぎらせ逆襲に転じる 主人公を演じさせたら、日本では健さんに並ぶ方はおられないです。
 ただ、やっぱりこの映画、自分としてはやっぱり絶対好きになれないと いうか納得いかないというか…(以下ネタバレ反転) 健さんが本編を通して命懸けで守る象徴だったはずの薬師丸ひろ子が あっさり射殺されちゃって、なんとも釈然としないものが残っちゃう のですよ。シーン的には映画最大のクライマックスで、 テンション盛り上がりぶり最高という所ではあるんですが。
 まあ、ラストシーン、戦車軍団に小銃ひとつで立ち向かっていく 健さんの勇姿でチャラということで。

 さて、そういうことで遂に前人未到の(いやいくらでもやってる人 いるけど)映画感想100本執筆をこうして達成することが出来ましたです。 また今後も、ジャンルに捉われない多種多様様々なバカ映画を見つけては 餌食にしたいと思いますのでヨロシク。



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