「ウルトラマンマックス」
第31話〜第35話





第31話「燃えつきろ! 地球!!」

挑発星人モエタランガ登場
監督:梶 研吾/特技監督:高野 敏幸/脚本:中島 かずき

  おぉおおおおっ! 燃えろ燃えろ燃えろォォッ!! 今回、題字を 島本和彦に書かせれば完璧だったのに(放送の前日、映画『逆境ナイン』 見たばっかだったので余計そう思ってしまったです…)。

 のっけから、トミオカ長官役黒部進のフラッシュスプーンならぬフラッシュ 植木ばさみのオイシいボケに始まり、くつろぎながら読んでる本のタイトルが 「カレー道」と今回も親父ファンを喜ばせるセルフパロディのオンパレード。 植木鉢片手にだらしなく緩んだ表情がもう最高であります。まさか、この序盤 のゆるゆるムードがクライマックスのための伏線だとは――。

 ともあれ今回、絶叫しながら燃えて突撃していくDASHメンバーという 予告編からして期待していたエピソードでして、初戦にてモエタランガ ウイルスに侵され、10倍パワーの熱血モードに突入するメンバーたちの 描写がとてつもなく良すぎ! とにかくモエタランガウイルスに侵された 人間が超人化するといビジュアルは、ダッシュバードやダッシュマザーの 墜落シーンからして秀逸で(笑)、 「ファイトォーーーッ!」と八百屋の軒先 にナマ身墜落してなお熱血パワー全開の隊長、なんという不屈の闘志! 俺は 一生あんたに着いて行くぜ! ご町内の皆さんもみんなあんたについてって るぜ!(番組でも珍しい商店街ロケの情景とあいまって、妙におかしさ倍増)

 自らの散布したモエタランガウイルスにより、感染した人間の発する熱血 パワーこそモエタランガのエネルギー。10倍のスピードで燃え尽きた人間 達の脆弱さを嘲笑するモエタランガに対し、ひとりダッシュバード3号にて 立ち向かうトミオカ長官。
「あきらめるな。限界の向うに、まだ自分の知らない自分がいる。燃え 尽きて、灰になって、それでもなお胸の奥に燻るものがある。 その炎は、 必ず再び燃え上がる!  私は信じている。燃え尽きたあとの限界を超えて、 君たちが再び立ち上がるその時を!」

 いやはや…日頃単純バカな熱血漫画とかが大好きな人間としては、極めて ハイテンションに視聴してしまいましたですよ。エピソード的には、やはり 10倍パワーでやる気パルスを全開にしているヨシナガ教授に極めてオイシい 局面で助けに入るダテ博士と、実のところは旧科特隊メンバー活躍編ながら (毒蝮三太夫氏の出演も決定しているとか!?)、人間の脆弱さを突き 侵略を行おうとしたモエタランガに対し、人間は決して脆くないという意地の 部分を描いた人間賛歌的な要素に、単純にまでシンパシーを感じてしまった のですよ。力尽きたカイトの胸に届くトミオカ長官のメッセージというのは、 23話「甦れ青春」同様に新旧二大ヒーローの共闘が再び実現した形であり、 予告での期待以上にエピソードが面白く仕上がっていたのが素晴らしかった であります。
 また、音楽的にも「剣の舞」やウグイスの鳴き声の効果音など含笑を誘う ものも多く、親父ファンからしても飽きさせない「マックス」の面白さが 充分際立った演出と思うのですな。

 今回のショーン…「Burned out syndrome」。
 今回の佐野史郎…「どうしたマックス、気が早すぎるぞ!」… 『ケロロ軍曹』のナレーションに聞こえちゃったんですけど。
 今回のエリー…最近指令室の報告役に徹していたせいか、久々に見せ場 爆発! 燃え尽きたDASHメンバーをことごとくダッシュアルファに 文字通りぶち込む姿、最高だよ(OK!)。
 今回の侵略宇宙人モエタランガ…『セイザーX』の放送地域に住んでる お子さん視聴者からは、デザイン的にもしかしたらパチ扱いされたかも (笑)。燃える見掛けのクセしてクールな知略宇宙人。なんだ、やっぱり 『セイザーX』に出てる奴のほうが本物だよ(熱血侵略宇宙人…)。
 今回のダッシュバード3号…もはやトミオカ長官専用機。黄色くてひたすら かっこ悪いオモチャのデザインを、どうすれば売ることが出来るかという 命題に対する演出上の回答。片手にバード3号のオモチャ弄びながら番組 見てる自分がいます。
 今回の脚本中島かずき…ネットの フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』からの引用によると、本業は双葉社の編集者ながら、小説家 であると同時「劇団☆新感線」の座付作家。「クレヨンしんちゃん」の 原作者臼井儀人とも交流あり。特撮ファンを公言しており、初期の 新感線作品では、古田新太の登場シーンで『突撃! ヒューマン』のパロディ をやったこともあったという。実現は果たせなかったが『特捜戦隊 デカレンジャー』の脚本を構想したこともあった…。まさに、今回の エピソードを書くに相応しい男の中の男だ!(爆笑)

 …さて次回、宇宙工作員ケサムの同族工作員またも地球に侵入。雑誌情報に よるとそのキャストは…。イカン、宇宙工作員って最低でもあと11人は いる。そのうち二人はかつてウルトラマンだった奴だ (うひゃひゃひゃひゃ)!



第32話「エリー破壊指令」

宇宙工作員ケルス登場
監督:梶 研吾/特技監督:高野 敏幸/脚本:大倉 崇裕

 コバ、遂に漢になる! 紛れもなく、というより文句なくコバ本格的主役回。

 冒頭の訓練シミュレーションシーンでの、直情的故に自らの治せないクセに 悩むコバと、冷静にそのクセを分析して(そう簡単にはいかない)解決方法を 提示するエリー。番組中でも際立って対比的な二人のやり取りからして 微笑ましく幕を開けながら、そこに絡んでくる新たな宇宙工作員ケルスの陰謀…。

 敵の正体が宇宙工作員と知り、動揺するミズキという細かい演出が冴えますが (監督:梶研吾と脚本:大倉崇裕は、先立って宇宙工作員ケサムが暗躍する 第7話も担当)、新たな工作員ケルスの、目的のためなら手段は厭わない冷徹さと ふてぶてしさはまさに悪質宇宙人。演じた小田井涼平(「仮面ライダー龍騎」 仮面ライダーゾルダ:北岡秀一役)も、特撮デビューが井上敏樹脚本の回と いうのもあってこの悪辣な侵略者に相応しいふてぶてしさを見事に演じて おります。ケサムと比較されて「あんな奴と一緒にするな」とか言うあたり、 地獄大使と比較された暗闇大使もそう言ってたなあと無理矢理ライダー繋がり(笑)。

 単身ケルスのアジトに突入し、戦闘員相手にガンアクションにて孤軍奮闘する コバ。射撃の名手と設定されたコバの持ち味が最大限に発揮される瞬間 ! 「ウルトラ」では意外と、射撃の名手隊員のガンアクション回に乏しいので (せいぜい、大型火器要員にされてしまったり…)このアクション路線は割と 新鮮であります。左手を負傷しつつ、小脇に抱えたダッシュライザーの シリンダーを交換するシーンなんかオモチャ片手にごっこ遊び したくなりましたというか。

 ケルスとの一騎打ちに臨むコバ。エリーを人質に取ったりコバの後ろを戦闘員に 狙わせたりと小悪党ぶり全開のケルスがなかなかに素敵でありますが。常に自身が シミュレーションで失敗していた状況、それを打開するのは鍛え上げてきた己の 技量と一瞬の状況判断。憎々しいまでのケルスの小悪党ぶりが、今回のコバの ヒーローぶりを際立たせております。

 というか、ここまでやったのなら最後までコバに華を持たせる展開をやって くれればいいのに…とも思ったんですが。宇宙工作員の爆弾の制御装置は、常に 左手のかなり目立つでかい機器(笑)。マックス対巨大ケルスの戦闘の最中、 わざわざミズキがそれを指摘してくれたのなら、救出されたエリーに肩を 借りながらもコバがダッシュデリンジャーにてそれを狙撃…。ここまでやって くれりゃ、今回培われたコバとエリーの信頼関係も含めて好展開になったものを。 あと、細かいツッ込みながら…ベースタイタンの封鎖が解除されたあと、 宇宙から世界各地のUDF基地を狙うミサイル衛星を撃墜に行かないのも疑問…。 ウルトラメカの都合いい便利さの例に漏れず、少なくともバード1号が大気圏 突破能力を持っていることは既出エピソードで明らかになっているんだから、 仲間の救出と平行して危険物の排除も真っ先にやるべきとも思ったんですけれどね …。まあ、これは細かな不満ということで。

 個人的に今回のキモは、敵が宇宙工作員と知ってのミズキの葛藤の様子で…。 ケルスのアジト突入後、敵の姿に動揺するも、迷いを打ち切るように放つ銃声が 仲間の命を救う。監督・脚本が「星の破壊者」からの続投とあって、ケサムに 対する心の傷を克服したミズキをきちんと描いた演出が拍手モノであります。

 そして触れぬ訳にはいきますまい今回のエリー…。今回、いわゆるヒーローに 助けられるお姫様的役割なれど、「私はアンドロイドです。でも、ここに燃えて いるものは人間と同じです」、「撃つときは、こうではなくこう」など、これまで の物語を通して人間臭さを増したと同時、「ここに燃えているものは…」の台詞に 自身がDASHの仲間の一員であることの誇りが込められていたあたり、人間と アンドロイドの隔たりも越えた、仲間同士の絆を表した名言と自分としては 認定したいですよ! あと注意してみると、割と人間臭い表情を覗かせるように なった彼女が、今回笑顔を見せるのはオーラスのカット…。今回全編を通して、 無表情に人間臭い振る舞いが目立っただけに、極めて効果的かつ眩しいラスト カットであります。

 さて次回…。登場怪獣、登場ゲスト、そして監督…。番組を構成するすべての 要素が、子供ばかりでなくすべての怪獣ファンに捧げるプレゼントとなりそうな 予感プンプン。ついでに登場怪獣と監督からして、映画「コスモス」になりそうな 予感もまたプンプン(苦笑/「マックス」感想書くようになってから、最近 「コスモス」許せる気がしてきた…未見の天本英世遺作、借りてこようかしらん?)。



第33話「ようこそ!地球へ 前編 バルタン星の科学」

超科学星人ダークバルタン 子供の超科学星人タイニーバルタン 登場
監督:飯島 敏宏/特技監督:菊地 雄一/脚本:千束 北男

 40年に渡るシリーズにおける、怪獣側最大の国民的スター、バルタン星人 遂に登場! 監督・脚本に、最初期からシリーズに関わる、言わばシリーズの 創生者のひとり飯島敏宏監督降臨…(言うまでもないけど、脚本の千束北男は 飯島監督のペンネーム)! そして、「ウルトラ」が子供たちに向けた良質の SFファンタジーであることを見事に実証してみせた好編であります。

 飯島監督が、バルタン星人の登場回を撮るということで…真っ先に連想した のが、同じくご自身がメガホンを取った映画「ウルトラマン コスモス THE FIRST CONTACT」だったのですが、実際番組が始まってみると、 たしかにその雰囲気に溢れた展開で幕を開けます。怪現象を目撃した勉少年と、 地球に危機を知らせに飛来したタイニーバルタンとのファーストコンタクト。 警告を発するための手段が、自身の星の科学の産物である重力制御現象という 種明かしはともかく、少女の姿をとったタイニーとの魔法の箒、空飛ぶ ジェットコースター、地に落ちることなく空を飛び回る無数の紙飛行機…と、 いずれもパニック描写でなく、それこそ魔法的なファンタジック表現にて 描かれているのがたまらなく良し(特出・毒蝮三太夫の笑顔が本当にいいですよ。 役者として、誇れる仕事をやっているんだという自信ゆえの表情とも思って しまいますが)。

 地球人に侵略の警告を発するために勉に協力を求めるタイニー。その目的の ための手段を楽しんでいるかのタイニーと、彼女に振り回されっぱなしの勉と いうのは割と紋切り的なキャラクター構成ながら、タイニー役半田杏の コケティッシュかつ陽性な演技と、前述のとおりの温かみに溢れた ファンタジックな演出があいまって、心弾む楽しいジュヴナイルとして完成 しているのはまさに監督熟練の技かシリーズの蓄積ゆえか。

 そして序盤の陽性の雰囲気を一変させて、ついに地球に飛来する侵略者ダーク バルタン…(バルタン星人のネーミングも×代目という表記でなく、すっかり 副詞的な単語がつくものと定着してしまいましたが)。タイニーが「幸福な未来」 を象徴するかに見せた、重力を制御する超科学が、侵略のための兵器として 使用されることを見せ付けるシュールでありながらも圧倒的なビジュアル ! マックスよりはるかに巨大化した体躯を維持するエネルギーと、マクシウム ソードで切断された自らの腕さえも瞬時に修復する治癒能力。宇宙忍者としての 超能力を超えて、まさに魔法の域にまで達してしまった超科学力の前に敗北する マックス――。前半の秀逸なジュヴナイルぶりが光るだけに、このマックス敗北の 絶望感が胸に迫る!
 今回、事前情報にて監督やゲスト、登場怪獣のネームバリューだけでもかなり 腹いっぱいの感じだったんですが、過去の遺産を前面に出しつつ、そこに とどまらないスタッフの意地を堪能させてくれるのが「ウルトラマンマックス」。 前後編からなるエピソードとして、次回にただならない期待をしつつ今回は ここまで(笑)。いやあ、いつもながらファンサービスに満ち溢れた番組 であります…前作の打ち切りを受けて穴埋め的に制作された番組、というのは まごうことなき番組の本質ながら、ここまで面白くなってくれるとは予想 できなかったですよ。

 今回の駐在さん…言わずと知れたウルトラマンレオ――おおとりゲンこと 真夏竜! トミオカ長官と併せて、劇中に三人のウルトラマンが登場する特撮 オヤジ的興奮! 今回、子供に接する大人キャラクターの代表的存在でも ありますが、ステテコ姿がやけに素敵すぎ(拍手)。
 今回の紙飛行機大好き警備員さん…蝮さんキターーーッ! ゲスト出演決定の 第一報を聞いた時点で、トミオカ長官やダテ博士達の同期のUDF高官か、 口は汚いが心根は優しい江戸っ子ジジィのどっちかの役かと予想して おりましたが、意表を突くぐらいの、夢見た光景を目の当たりにしている笑顔… というのが冗談抜きで素敵。「ウルトラ」の俳優さんは、笑顔が良い方々が 本当に多いですよ。
 今回のタイニーバルタン…人間体を演じる半田杏は、ぱれっと所属の若手 タレント(1991年生まれ…!)。同じ事務所の先輩にはエリー役満島ひかりが いるので、そちらの関連のキャスティングかなとも思いますが、なかなかに めっけもんな女の子連れてきたなあというのがまごうことなき感想(笑)。

 さて今回、同監督作品ということで本当に「ウルトラマン コスモス THE FIRST CONTACT」の直系という印象が強いのですが、真夏竜演じる 駐在さんにカイトらDASHメンバーと、子供に対する大人たちの優しい視線と いう演出もまた輝いております。荒唐無稽な子供の話に、きちんと耳を傾けて くれる大人…というのが、ファンタジーの中だけの存在になっちゃあかんですよ。 「勇気を持ってDASHに通報しよう。DASHは必ず来る!」



第34話「ようこそ!地球へ 後編 さらば!バルタン星人」

超科学星人ダークバルタン 子供の超科学星人タイニーバルタン 登場
監督:飯島 敏宏/特技監督:菊地 雄一/脚本:千束 北男

 前回の怒涛の戦闘ダイジェストから、一気に突入するOP! OPの最後、 「超科学星人ダークバルタン」の名に重なるバルタン星人の声のSE! 前回の 面白さが際立っていただけに、いざ! という姿勢で視聴に臨んだんですけど… あれ?

 うぅむ…飯島監督のファンタジー嗜好からして、オチの付け方には別に文句は 無いしこれはこれで良かろうとは思うんですけど…なんか、物語構成の繋がりが いまいち弱いような…。

・エリーの機能回復のため、エリーとコバのらぶらぶモード…「エリー破壊指令」 からの伏線? てゆーか普通に見てて照れくさいまでの萌え展開なんですけど (笑)。基地機能回復にエリーのほうが必要だったり、戦闘に際してまで基地に 居残りを命じられたり、発明家隊員としてのショーンの役立たず扱いがあまりに 悲惨なような?
・瓦礫に埋もれ、マックスに変身するためのエネルギーまで失ったカイトを救出 するため、勉とタイニーが連れてきた子供たち…。子供たちの前で思いっきり正体 暴露というか、結局何のために連れてこられたのこの子たちは ??
・地球時間で数年? 1週間? 2分?? もはや時間の概念、メカニズムを超越 したバルタン星の科学力の凄さはともかく、ダークバルタンを倒すために一度 バルタン星まで戻り、古代遺跡の銅鐸を取りに戻るタイニー…ダークバルタンも これを狙っていたというなら、なんで地球に来るより先に奪っておかない ? タイニーのほうも、切り札として最初から地球に持ってきてれば良かった だけの話では??(←ここまでくると心無いツッ込み)
・「惨めな進化」を遂げたバルタン星人を、一撃で元のヒューマノイド体に戻す 発明を引っさげて、何の伏線もなく唐突にドバンと登場するダテ博士…クルル曹長 の夢成長促進銃(ジンセイガニドアレバガン)や鬼娘専用変身銃 (ワタシガダレヨリイチバンガン)に匹敵する便利な発明だ! てゆーか、 環境破壊のために肉体が変質してしまったバルタン星人の身体を元に戻す というなら、バルタン星の超科学力を超越しちゃったじゃん!?(うそーん!?)

 いやあ…前回が前回で、極めて良質なSFファンタジーとして完成していた分、 その続きとしては正直弱かったというのが包み隠しようもない感想でして…。
 カイト=マックスを復活させるために子供たちを連れて来るもその理由が希薄 なのはどう見ても明らかだし(せめて、バルタン星人との別れのシーンにて DASHたちと共に見送るとかさあ…)。重力制御、ビジュアルからも明らかな 驚異的なクローン技術という超科学力を持ってしても、環境破壊されてしまった 惑星を元に戻すことができないという理由付けも弱い。正直前回のフ ァンタジックさに比べて粗の部分が目立っちゃったなあというのが…。

 トミオカ長官とヨシナガ教授のディスカッションによって明らかになっていく、 地球人とバルタン星人、それぞれの正義の傲慢さと脆弱さ…。そして、その テーマを締める台詞としての「ウルトラマンマックスの正義は、平和」とか、 これぞ飯島監督によるウルトラのテーマと膝を叩くところもあるだけに、上記の ような部分部分の粗が目立ったのは残念であります。ただ、前回の感想で述べた とおり、「ファンタジーとしてのウルトラの復権」に際してはこの前後編、 宇宙人であるタイニーと勉少年の交流を軸にした物語として、その出会いから 別れまでを嫌味な演出なく爽やかに描かれていたのが本当に良かった。何より 旧来オヤジ怪獣ファンにとって嬉しかったのは、飯島監督による子供番組としての ウルトラへの想いが健在だったことでして…。
 上原正三に実相寺監督と来て、さらに飯島監督までも21世紀の新たな ウルトラの舞台に再起させたのは、この番組最大の成果だなあと思いますですよ。 いよいよ番組も終盤、最後までこうした怪獣ファンの興奮を呼び起こす テンションを維持したまま、最終回のその時を迎えて欲しいと切に願いますです。

 今回の隊長…面白がっているねあんた絶対面白がっているね!?
 今回のダテ博士…既にDASHの、最後の切り札化しちゃってるよ!
 今回のトミオカ長官…チベット大好き。
 今回のヨシナガ教授…嵯峨野大好き。
 今回のお巡りさん…見た、確かに見ました視聴者も! その左手に燦然と輝く “獅子の瞳”を!(きゃー!) あの日、少年と別れ、夕陽の海に旅立った若者 は今も第二の故郷の平和を守り続けていたのだなあとしみじみ…。前回の、 一貫して勉少年の味方としての振る舞いが一発で納得いきましたですよ。いかん、 最終回、マックス・ゼノンの危機に颯爽と現れる第三のウルトラマンの勇姿を 妄想…(もやもや)。

 そして、ダークバルタンVSマックスの戦闘シーンにおいて…前回の超巨大化 で度肝を抜いたばかりだというのに、今回のバルタン軍団対マックス軍団全面 抗争の画でさらにひっくり返ってしまった! また、スペルゲン反射鏡もなにげに 増枚されてるあたりも芸コマというか、こうした新鮮な画面作りを前にすると、 「次のウルトラではどんな画がみられるのか」という期待が俄然高まりますが (オヤジ怪獣ファンってのは、こうした期待感を胸に長年シリーズを見続け ちゃうのですよ)。



第35話「M32星雲のアダムとイブ」

星雲守護獣ホップホップ 星雲小獣アダムとイブ 登場
監督:金子 修介/特技監督:鈴木 健二/脚本:藤川 桂介

 旧作ウルトラスタッフ最後の大物・藤川桂介脚本降臨! まあ近年でも 「ウルトラQ dark fantasy」で書いてますが、やはり「ウルトラマン」を書く、 ということで、俄然視聴前から興奮気味であります。

 と、心象的に高いテンションのままに視聴に望んだのですが…いやあ、前回の 飯島敏宏監督に次いで「ファンタジーとしてのウルトラ」を書き上げて おられたとは…。
「ウルトラマン」の企画自体から関わり以降多くの特撮・アニメ作品を手掛けて きたベテランとして、そのキャリア故の視線が効いているというか、終始 「視聴者の子供にまっすぐ前を向いた視線」で物語が綴られているのが印象的 でもあります。「子供と怪獣(非日常)との遭遇」というテーマについては 前回の飯島監督によるバルタン星人編前後編同様ながら、こちらは実質上の主役と なる子役、小林翼くん(平成版「子連れ狼」の大五郎役としてじいちゃん ばあちゃんには認知の顔)の懸命さが伝わる演技が、離れ離れになった仲間の 怪獣同士を再会させようというストーリーを支えるものとなっており、本編の 空気に心地いい清涼感を与えております。

 一方で、保護された怪獣ホップホップが世論から危険視されていたり、 子供にとってはDASHが「怪獣と見たらすぐに殺してしまう怖い大人」として 描かれているあたりのディティールの細かさが「怪獣を保護した」という 状況に置かれた子供たちの焦燥感を煽るドラマを作っていて(自分の家に、 突然DASHが訪ねてくることの怖さが描かれているあたり)、この辺は 本編を演出した金子修介監督の技量ですかね。こうしたサスペンス的な 盛り上がりが、子供たちとカイトの約束にて氷解する安堵感は、まさに番組 本編の良質な空気を体現した場面といえ…マックス登場のクライマックスから ラストに至るまで、一貫した爽やかなファンタジー足りえた佳作となりました です。

 テレビ番組黎明期から今日まで多くの子供番組を手掛けたベテラン脚本家、 番組の空気を作るのに携わった実力派監督、そして名子役の演技力…それこそ 祖父、息子、孫といった三世代…まさに「ウルトラマンを作った代」、 「ウルトラマンに育てられ大きくなったた代」、「そして今まさにウルトラマン を視聴している代」が渾然一体となって、今回のエピソードを産み出したと 思うと…シリーズの積み重ね上げてきた年月のなんと膨大なことかと感慨深くも なったり。

 今回の怪獣ホップホップ…これも、怪獣というよりはポケモンっぽいデザイン になってるのが時代の流れ(苦笑)。自身の体熱だけで周囲を火災にして しまうあたりのディティールは、同じく藤川桂介が脚本を手掛けた 「果てしなき逆襲」のザンボラーへのオマージュ?

 今回放映の当日、同じく「ウルトラ」に深く関わったベテラン脚本家、 佐々木守氏の訃報を知りました。かつてシリーズを立ち上げた世代の方々が、 現在に至っても表舞台の第一線で活躍されている中、新作シリーズへの招聘を 期待していた方のおひとりであるだけにかえすがえすも残念です。氏が脚本を 書いた、エッジの効いた多くの作品が、今後新たにウルトラマンに 接していくであろう多くの子供さんの胸にもしっかり刻まれていくことを 願いつつ、まずはご冥福お祈りします。そして手掛けた多くの作品にて 楽しませていただいたこと、本当にありがとうございました。


豪雪地帯酒店・第二事業部はものをつくりたいすべての人々を 応援します。


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