「ウルトラマンマックス」
第26話〜第30話
第26話「クリスマスのエリー」
神話の幻獣ユニジン登場
監督:八木 毅/特技監督:鈴木 健二/脚本:太田 愛
クリスマスミラクル編またはエリー主役ほんわかほのぼの編と呼んで差し
支えないでしょうか? そもそも今回登場の怪獣からして、本当に彗星とかと
同義の存在といえ、やっぱり今回のメインはエリーとゲスト犬塚弘の交流編に
尽きるんじゃないかなあとか。
ゲスト、犬塚弘演じる古理博士は、円谷繋がりならまさに「ダイゴロウ対
ゴリアス」の発明おじさんの2005年現在の姿とかも思っちゃいますが、
やっぱりいい意味で少年っぽい、感情豊かな好奇心溢れたジジイっぷりが、
無感情がトレードマークみたいなエリーとのよい対比になっております
(多少浮世めいた老人と、主人公側のキャラクターとの交流話だったら、
近年では「幻星神ジャスティライザー9話/オリオン座の秘密」という佳作
がありますが)。
12年に一度、イヴの日のみ姿を現わす幻獣と、人生を賭けてその幻獣を
追いかけてきた老人。夢を疑うことを知らない老人の純粋さに、胸に手を当て
ひとつずつ、情感を揺さぶられたキモチを覚えていくエリー…。エリー主役話
としては、パートナーとなるゲストの選択から成功しているなあというのも
ありますが、やっぱり全編を貫くホノボノとした空気が、満を持しての怪獣
出現というクライマックス以降も失われていないというのが実は今回の凄い
ところ。
やっぱり脚本・太田愛の感性はこういうのを書かせたら上手いなあという
のがありますです。前回が、感想で述べたとおりドラマの主軸に対して周囲の
ディティールが大雑把になってしまったというのがあったんですが、今回に
ついては終始物語の視点が古理博士とエリーに集中していた分、特に不満も
嫌味もなく見てしまいました。放送日が本当にちょうどクリスマスイヴと
いうことで、これが夕方6時代の放送でないのが今回はちょっと惜しいと
思ったり(朝の7時半から「BLOOD+」を放送されても問題ですが/笑)。
また12年後、ユニジンとの再会を楽しみにイヴの我が家へと帰ってい
く古理博士。「老人の夢が叶った」という締め方でなく、「これからも夢を
追いかけていく」というクロージングは本当に良かった。
「クリスマスは、誰もが誰かを喜ばせたい日、誰かを幸せにしたい日、
です」
物語全体の雰囲気が、この台詞を生きたものにしてくれましたですよ。
今回全体的に血の気は皆無な話でしたが、元より「恐怖」も、そして
「奇跡」も、怪獣という器に託した「不思議」な物語として紡がれていくのが
空想特撮シリーズ「ウルトラ」。歴代名怪獣続々登場という「マックス
」最大の宣伝文句が、こうした「ウルトラの基礎」もまた番組構成に取り
戻したのかも。
最近の「マックス」は、アクション編と寓話系編が交互に放送されている
感もありますが、今回や「狙われない街」に代表される寓話編の総括もまた、
いつか訪れる番組最終回の後の楽しみになるかも知れませんです。
今回のエリー…電気屋の防犯カメラに残すメッセージが可愛いよって、
今回の話の後、犬塚弘普通に窃盗でパクられるんじゃん…(南無)。
今回のカイト、コバ…「えーーーっ!」のリアクションが良いねえ。
今回の怪獣・ユニジン…生物というよりはやけに無機質かつ調度品的な
デザインは、これまた「ポケモン」の時代の怪獣であります。
さて次回、「アクション」→「不思議系」の交互にストーリーが展開する
とおり、サブタイからしてこれでもかのバトル編! 大晦日放送に相応しく、
血の気を上げて鑑賞しますですよ!
第27話「奪われたマックススパーク」
放電竜エレキング 変身怪人ピット星人登場
監督:八木 毅/特技監督:八木 毅/脚本:小中 千昭
今やすっかり「マックス」における人気怪獣となったエレキング再登場編。
大晦日の朝から(放送日が12月31日)テンションも上がる怪獣激闘編
というのが、2005年「ウルトラマンマックス」という番組にハートを
掴まれたファンとしては如何にもでありますが、実質的にはミズキそして
ピット星人を主役としたヒロインキャラメイン話…いえ、感想が言いやすい
ように言葉を変えれば「小さな英雄」のバリエーション話でもあります。
「小さな英雄」のバリエーション話として、今回防衛チーム隊員としての
自身の無力さに苦しむ役どころがミズキでありましたが、その悩む理由が
どうもカイトと自身の対比にあるのではないかというのは劇中カイトとの
対話シーンにて暗示されております(明確に悩む理由を吐露はしませんが…
これまでの回を見る限り、明らかにカイトの引き立て役になってるあたり
/笑)。普通に話を進めるのならば、そのミズキの心理的苦悩に侵略宇宙人
がつけ込む話になるところが、そんな一隊員の個人的感傷など相手にもしない
侵略者像を書くのが脚本小中千昭(なにげに今回脚本初参加)。
どうにも「ウルトラ」における小中脚本ってやたらクールな話のイメージが
強いせいか、どちらかといえば陽性にて熱の籠った番組であろう「マックス」
においては如何に作用するのかと思いきや、失敗→自責→説得→再起という
王道でもある物語をしっかり書いていたのは二重マル。こでイデ隊員に対する
ピグモンの役割を果たしたのが、自身の対比対象であったはずのカイトと
いうのはともすればミズキの「自責」を更に揺るがしかねないのが、今回
前半でのカイトのDASH志願理由を語る台詞が効果を上げております。
「絶対に入らなきゃいけないって思った。一番やりがいのある仕事だった」と
までDASHへの憧憬を熱っぽく語るカイトと、果たしてそれほどまでに
DASHの任務に情熱を持っていたかどうかを定められない自分。しかし、
自分のやるべきことを思い出した時、DASH隊員ミズキは再起する…
! いえここまでのドラマの持っていき方そのものに文句はないんですけど
…。ただ、エレキング幼体に取り付かれ苦しむカイトを振り切って(まあ
カイト自身がそうしろとは言ってるけど…)盗んだバイクで走り出すあたり
…。個人的には、別にここでカイトを助けることで、隊員としての責任感を
取り戻すのと自身の苦悩にピリオドを打つ展開にしても良かったと思う
んですけど。なんとなく、この後結果的にエレキングに勝利したとしても、
カイトが倒れたとあったら更にミズキの苦悩が増すことになってただけでは
という心ないツッ込みが働いたんですが(苦笑)。
まあ、今回本来のサブタイが「奪われたマックススパーク」なんだから、
カイト自身がピット星人からマックススパーク奪回のための活躍をしなければ
ならないが故の演出でもありますが…正直、「変身アイテムが侵略宇宙人に
奪われた」という緊張感が伝わらないようなら、話の主題をミズキの苦悩
復活編に絞ったほうが良かったんでないのとも思いますです。でも、前述の
マックススパーク奪回のためのアクションシーンにおいても「ピット星人円盤
(「セブン」当時のものと同じ八角形円盤!)対ダッシュアルファの空中戦」。
「撃墜されたダッシュアルファから飛び降りつつ、空中から円盤に銃撃する
カイト」といった仰天映像が見れたあたりはなかなかでしたけど。
しかし…ラストシーン、「ウルトラ」定番の「おーい」帰還が、こうも
爽やかに見れたあたり…。不満点に目を瞑れる、好印象の残ったエピソードで
はなかったですかね。
今回のピット星人…変身後弱っ! ロリキャラ双子でなく、かっこいい
お姉さんコンビというのがモロ直撃! 星野マヤは「超星神グランセイザー」
、セイザーヴェルソー役で御馴染みの顔ながら、スレンダーなボディーから
繰り出される鋭いアクションが健在でちょっと嬉しかったり。片割れのほうの
益子梨恵は、2002年カネボウ・スイムウェアイメージモデルにもなった女優
さん。
今回のエレキング…ウネウネ動く幼体のキモさもさることながら、もはや
すっかり夜の都市に現れるのが定番の怪獣となりましたです。トドメに喰らった
マクシウムソード分身斬りは、なんとなく一峰大二の漫画っぽかったり。
今回のDASH…エレキングを一匹葬るあたり大金星! 防衛チームが
ここまで役に立つ展開は稀というか、しかしバード3号ってとことんオイシイ
局面で活躍するメカだな…。
次回、いよいよ「僕の考えた怪獣コンテスト」優勝怪獣登場! 着ぐるみを
見た時点での「80」怪獣っぽい「いかにも」さ(ファイヤードラコとか)
が良し!
第28話「邪悪襲来」
凶獣ルガノーガー登場
監督:村石 宏實/特技監督:村石 宏實/脚本:林 壮太郎
番組の一視聴者、鈴木敦くんが考えてくれた怪獣ルガノーガー大暴れ編。
いかにもお正月らしいテンションで幕を開けるのは、幼年層ファンにも親父
ファン層にもウケがいい「マックス」ならでは。そして怪獣激闘編といえば
この人、武闘派村石宏實監督というのもあって、視聴前から血の温度が
沸騰しております。
そうして視聴した本編ですが、むむむ、なんと感想サイト泣かせな…
ツッ込みどころがない! いえ、話の最初から
最後までストレートかつ剛速球な「ウルトラマン対怪獣激突話」として
作られているので、ツッ込みどころとなるような脚本上の突出した
部分とかささくれ立った部分とかのとっかかりが、今回無いに等しいのですよ。
逆を言えば、今回はそれだけ集中してテレビを視聴できた話でもあって…。
多少難解かつヒネったような話とかファンタジー系の話が続いたかと思いきや、
新年一発年明け早々からこうも直球な話をぶつけてきたあたり、番組構成の
緩急の付け方というかバランス配置が上手い番組ではあるなと思います。
とりあえず今回、文章仕立ての感想が作りにくいというのもあるので気に
なった点を箇条書きっぽく…。
・カイトの両親は災害の犠牲者…前回、カイトが熱っぽく語ったDASHへ
の志願理由が明確になる瞬間。第1話から劇中幾度となく描かれてきたカイト
の、DASH隊員としての過剰なまでの使命感のバックボーンとなる設定が
明かされたという意味でも今回は結構重要な位置付けの話でもあります。
・ゲスト、宇宙避難民リリカ役斉藤麻衣は映画「コスモス2」や
「仮面ライダー555」でのゲストなど、若いながらなんとも特撮に縁深い
女優さん。そんな彼女の、視聴者の最も記憶に残る役といえば、映画デビュー
作でもある「ティガ&ダイナ・ウルトラマンガイア〜超時空の大決戦」での
ヒロイン・七瀬リサ役でしょうか。
・ゲストの一人、ボランティア団体のリーダー役安藤一夫は、「ガイア/
46億年の亡霊」にて、この回のみ故・円谷浩の演じた田端に替わってKCB
クルーの先頭に立った梅沢ディレクターを演じた方…。シリーズゆかりの人と
呼ぶには微妙ながら、ある意味ではかつて記憶に残る役を演じた人では
あります(笑)。
・冒頭、山中で迷子になった挙句ケガして気絶している少年、アツシくんの
名前は…当然のことながら、今回の怪獣をデザインしてくれた子供さんの
名前から来てるんでしょうな。この子にとっていいお年玉になったことで
しょうねえ。このアツシくんに限らず、今回はいかにもヒーロー物っぽい
子役の使われ方がなんとも微笑ましいというか(苦笑)。
そして、今回真の主役となるルガノーガー。いかにもなトゲトゲの意匠だの
三ツ首のデザインだの、これぞ「僕の考えた最強怪獣」というあたり実に良
! 残念なのは、リリカの星を滅ぼした時といい森の中で光線出しまくって
ばっかという暴れ方しかしてないので、ツラ構え以外惑星を滅ぼす凶悪怪獣
って説得力に欠けちゃったのが…。やっぱりこの怪獣による都市破壊シーンが
見たかったですな。まあ、その分マックスとの肉弾戦が充実していたという
ことで(跳び蹴りアクションとか素直にかっこよかった)。
今回のショーン…「書道とはハートで書くもの」の名言。赤い専用トンカチ
にはしっかり名前が(カタカナで)書いてあるし。
さて次回…これぞ幼年層ファンにも親父ファン層にもウケがいい「マックス」
の真骨頂というか、いつもながら予告だけで拍手させてくれる番組であります
(わくわく)。
第29話「怪獣は何故現れるのか」
牛鬼怪獣ゲロンガ登場
監督:村石 宏實/特技監督:村石 宏實/脚本:小中 千昭
もはや恐ろしいまでに視聴者のお子さん置いてけぼり、怪獣オヤジだけ
喜べばそれでいいや話と、視聴したオヤジ怪獣ファンの皆様もご満悦
しながら喜ばれましたでしょう…。いえ今回、とんでもないぐらいに視聴者の
お子さんへのサービスに溢れた話であります。
佐原健二(なにげに「ネクサス」から続投)、桜井浩子、西條康彦のお三方
が、「ウルトラ」にて再びテレビ画面の中に集う…。加えて、日本でこの人の
撮った話を見たことない人間はいない満田かずほ監督登場というゲスト陣の
人脈的カタルシス! 今回このキャスティングだけで目が眩んだファンも大勢
いたことでしょうが、実は今回、気付いた子供さんは大喜びな方々も登場
しております…。
1964年の佐原健二役…「超星神グランセイザー」セイザーゴルビオン
こと岡田秀樹。
1964年の桜井浩子役…「幻星神ジャスティライザー」ヒロイン天堂澪役
江口ヒロミ。
討論番組のコメンティター…もはや誰もが知っている赤星昇一郎(
「グランセイザー」堀口博士)。
1964年の撮影現場に現れたお巡りさん…「ジャスティライザー」
ギャグ担当店員健一役正名僕蔵。
…いやはや。前回気付かなかったけれど「名もなきボランティアのお姉さん
=セイザーパイシーズこと伊藤久美子」と、何気に3週連続「超星神シリーズ」
よりゲスト連続出演。この超星人脈セイザーMAX状態はどうしたことだと、
ある意味前述の「ウルトラQ」同窓会より手を叩いて喜んでしまったのですよ
(嬉笑)。まあ、村石宏實監督は元よりご自身の人脈からどんどん俳優を
連れてくる方(「ティガ」、「ダイナ」での、「電脳警察サイバーコップ」
メンバー続々出演とか)。現在進行形で「ウルトラ」と同時期に続いている
シリーズからのゲスト陣は、親父ファンばかりでなく、見ていて気付いた
子供さんにも喜ばれる要素になったと思いますです。
たま出版の韮澤編集長が呼ばれそうな議題の討論番組にて、怪獣が出現する
理由を「人間が怪獣の存在を望んだからではないか」と力説する佐原健二…。
あまりに観念的な説ではありますが、しかし怪獣の存在意義、その暴れる
理由などを登場人物が考察するという話はこれまでのシリーズになかった訳
でなく(お勧めとしては「ガイア/宇宙怪獣大進撃」)、おそらく日本で
最も怪獣に携わった俳優のひとりであろう佐原健二の口から語られることで、
なんとも不思議な説得力に満ちた発言になっております。個人的にはこの説を
「ウルトラ」全体の核となるぐらいに押し切ってほしかったところながら…
さすがに脚本小中千昭も「怪中は何故現れるのか? その答えはひとつでは
ないのかも知れません」とのナレーションを話の締めとしてしまいましたとさ。
佐原健二らがゲスト出演することを前提とした脚本ながらも、サブタイの示す
シリーズのある意味根源的な部分に言及した脚本は、ゲストの豪華さに
埋もれることの無いテーマ性を打ち出したと言えて…。これまでも様々な佳作
・問題作を生み出してきた「マックス」の、只者でないエピソード群の中でも
こと異彩を放つ回ではあります。
そして、画面作りにおいてはこれでもかとばかりの親父趣味炸裂!(笑)。
全体的にノスタルジックに統一された新録BGM(番組タイトルの
ファンファーレまであの懲りよう!)に、冒頭のセルフパロディとも
オマージュともどう取ったもんだかのナレーション。本当にバラゴンの
バリエーションとしか言いようのないゲロンガのデザイン(バラゴン
改造怪獣ということであのジャンプ…)のなんと秀逸な! そして満田監督を
始めとした1964年の「アンバランス」撮影の様子の微笑ましさ…当時の
様子を再現したフィルムという意味でも今回は貴重な画像になるのかも。
そして物語全体を象徴するような、西條康彦氏の40年の時間を越えた
朗らかな笑顔…。
キャスティングの豪華さもあるけれど、こうも休日の朝に相応しい話が多い
のもまさに「マックス」最大の番組カラーではないでしょうか。
今回の村石監督…マタギ(似合いすぎ)。
今回のセイザーゴルビオン…セイザースーツを装着せずスコップ一本で
怪獣に立ち向かう! 42年前の佐原健二役として、理知的なヒーロー俳優
というのがベストキャスティングであります。
今回のお巡りさん…「ジャスティライザー」でのキャラクターまんまで、
なんか嬉しくなってしまった。
今回も赤星昇一郎…「マックス」の世界では、赤星昇一郎に似た人があと
7〜8人ぐらいは平気でいそう。
物語のテーマそのものが、単なる過去作品キャスト同窓会にしないという
気概が籠ったものになったことは、「視聴者の懐古趣味に訴えかけている」
という番組最大の悪評を覆すだけの力が入ったもので、考察が前面に出る
という本来子供には受け入れられないであろうエピソードながら、
締めとなる「ウルQ」メンバー再会の図と合わせてやけに爽快さを伴った
視聴感を残しましたです。
しかしまた…カイトとミズキのいつものバカップルぶりはともかく、
こうもDASHメンバーが添え物扱いというのもナンですが(笑)。
第30話「勇気を胸に」
進化怪獣ラゴラスエヴォ登場
監督:高野 敏幸/特技監督:高野 敏幸/脚本:小中 千昭
イロイロとまた、バラエティに富んだエピソードを出してきてくれるのが
「ウルトラマンマックス」という番組の面白いところながら(それ故に、
こうして拙いながらも感想を書くのが楽しいんですが)、今回は全体的には
渋めに「帰ってきたウルトラマン」的雰囲気のお話。
予告を見た限りでは、サブタイからしていよいよショーン主役で本格的に
「小さな英雄」話をやるのかなと思ってたんですが、意外(?)なことに
メインはカイト。そして、ここ数回に渡って語られてきたトウマ・カイト
という主人公の成り立ちを示すエピソードの締めでもあり、カイト自身の
悔やんでも悔やみきれない過去と、そしてDASH隊員への志願と決意が
カイト自身の口から語られますです。
もしも、あの時マックスと出会ってなかったら――。勇気と無茶を履き違えた
が故の自身の死…。夢見たifの世界に、今現在マックスの力に頼りきって
いるのではないかというカイトの葛藤に始まり、そして第1話において鮮烈な
怪獣総進撃ぶりをさまざまと見せ付けたラゴラスとグランゴンの再登場と、
そのラゴラスがパワーアップしての復活劇…。前線基地を設営しての怪獣
迎撃作戦のミリタリーチックな雰囲気は、まさしく「帰りマン」の世界観や
好編「ティガ/ゴルザの復讐」を髣髴とさせ、そしてそこに人間ドラマとして
の充実度を見せる、カイトそしてショーンの自身を見つめ直す物語が
織り込まれる。
初戦にて、人間への憎しみをむき出しに暴れる怪獣ラゴラスエヴォを前に
怯え、恐怖するショーン。
「僕は、自分の発明した物で怪獣を倒すのを楽しんでただけなのかな」
DASH隊員としての使命感よりも、一研究者としての自分をどこか優先
させていたのだろうか? 思い悩むショーンと、マックスの力に頼りきって
いる自分を自覚し、初戦にてマックスに変身しなかったが故に怪獣をとり逃
してしまったことを悔やむカイト。そして、初めて明かす、自身の旅行中に
災害にて親を失った過去…。
「俺は親を救えなかった。でもそれを運命だなんて思いたくないんだ」
自身の過去ゆえに、誰よりも「誰かを助けたい」という使命感を強くして
いるのがトウマ・カイトという人間のパーソナリティー。しかし元来DASH
の採用試験にはパスできなかったように、自分がDASH隊員として特別な
才能に恵まれていないことは自覚している。
だけど、だからこそ、自分の力の限り、自分の出来ることを精一杯やる
しかない。
「ショーンは、才能あるじゃないか。ショーンの才能で、多くの人が救えた
じゃないか」
「俺たちががんばらなきゃ――マックスだって助けてはくれないさ」
ここまでの僅かなディスカッションの中に、カイトとショーンの葛藤、
そして我が身を振り返ることでDASH隊員としての自身の在り方を二人が
再確認する展開は、尺的な性急さを感じさせない見事な出来栄えであると
ともに、またキャラクターとしての存在感を示しつつも物語の流れの上では
「便利な博士キャラ」の域を出なかったショーンを、きちんと物語の中に
織り込ませたという上でも重要なシーンであります。その後、穏やかながらも
ちょっと妬いてる雰囲気のミズキがいつものバカップルモードで苦笑ポイント
ながら。
そして再び姿を現わす怪獣。マックススパークを掲げ、光の世界の中、
ウルトラマンマックスと対峙するカイト。何故、あの時、自分を共に戦う者
として選んだのかを――。
マックスは語る。自分は、文明が進んだ惑星が宇宙と調和できるかを観察
している者。本来その文明には干渉しないと…。
「しかしカイト。君の、みんなを守りたいという気持ちが私を動かしたのだ」
意固地になって、自分ひとりで後先考えずに暴走するのは無謀。誰かのため
に自分のできる限りのことを、自分の力ギリギリまで努力するのが勇気。
「無茶」と「勇気」の違いは、自身のつまらない意地で突っ走るか、
誰かのために努力をするかの違いなのだ。
「自分の判断を信じたまえ、カイト――」
ともすれば今回、「人が、ウルトラマンに頼ることの便利さ」を許容して
しまったエピソードと揶揄されて残ることになるかも知れない。だが、実は
今回この瞬間こそ、ここ数回に渡って描かれてきたカイトという
キャラクターの在り方、それがまさにこの瞬間結実したのだと思いたい。
勇気――それこそが人間トウマ・カイトの在り方。ウルトラマンマックスと
その意志も身体もひとつに、共に戦う資格なのだ。
出現するマックスと、DASHメンバーの勇気が強敵ラゴラスエヴォを
粉砕する。他のメンバーたちの描き方も丁寧だった上に、最後まできちんと
ショーンに華を持たせる展開はまさに「小さな英雄」であると同時、今回が
カイトとショーンのダブル主役話であったことを雄弁に語っております。
そして、仲間たちの元に戻りつつ未来への誓いを新たにするカイトの
モノローグで締めるあたり、イイ年してヒーロー番組に夢中になってて
良かったなあという満足感と幸福感で胸いっぱいになりましたですよ。
「ウルトラマンというヒーローの王道復権」とは、「マックス」に対する評価
としておそらく今後消えることの無い文句かも知れませんです。しかし、
それだからこそ、時代を穿つような作り方をして、設定の難解化、連続性
ストーリーによる物語の複雑化、爽快感の欠如などといった弊害を伴ってきた、
近年のヒーロー番組に対しても、強烈なまでのベーシックスタイル足りえる
番組となっているのではないでしょうか。
番組も、いよいよ30話を消化して、残るは予定製作本数2ヵ月分の放送を
残すのみ。いよいよゴールも間近に迫ってきたこの番組が、「本物の王道」
として如何なる終着点をみせるのか、まだまだ楽しみは尽きませんです。
今回の正岡邦夫…ゲストとしてクレジットされてる正岡邦夫は「平成セブン」
シリーズにてウルトラ警備隊シマ隊員を演じた他、「ネオス」にも
ウルトラセブン21の一時の仮の姿という重要な役を演じたりと「ウルトラ」
に縁の深い俳優さん(東映ファンには「超力戦隊オーレンジャー」
オーグリーン役が印象に残りますが)。エキストラ扱いでなく、もうちょっと
いい役で使ってやれよと思ってしまったり。
今回のグランゴン(死骸)…怪獣の化石が発見されないのは、死後の腐敗が
激しいからという特撮番組的疑似科学考証に貢献…ていうか、こんなあたりに
脚本小中千昭らしさを感じてしまったり(苦笑)。
しかし今回、クライマックスで脳内に「ガイア」の主題歌が激しく
リフレインしてまいました…いや「ガイア」の主題歌、好きなんですな。
さーて来週の「マックス」は…イロイロな意味でわっし好みっぽい話に
なりそうだなあ。また感想の書きがいがあるといいですが(わくわく)。
豪雪地帯酒店・第二事業部はものをつくりたいすべての人々を
応援します。
目次へ