「ウルトラマンマックス」
第21話〜第25話
第21話「地底からの挑戦」
古代怪獣ゴモラ登場
監督:栃原 広昭/特技監督:鈴木 健二/脚本:高木 登
実は今回とか放映されていた頃、筆者自身が秋のイベント参加を控えて
ゴタゴタしていたのですが、そんな混乱状態で前回の感想書いたら、
「芳本美代子=劇場版ティガのカミーラ」とか「DASHの東京サイレント
作戦の前に音を出すのを妨害されるいろいろな人=赤星昇一郎」とかの
特大ネタを書き漏らしてしまってヘコむヘコむ…。モノ書くなら精神状態を
落ち着かせることが重要と改めて反省。
番組開始時、鳴り物入りで開催した「番組に登場してほしい人気怪獣
コンテスト」にて、見事コンテスト1位の栄冠を獲得した人気怪獣ゴモラ、
満を持しての登場編です。
冒頭の「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」風、バカ若者による
ドキュメンタリービデオに出現する等身大ゴモラでまずは視聴者の意表を
突き、ワイドショーにてデムパと受け取られかねない発言をかます
ジャーナリストの登場。しかし劇中に「某国と環境テロ組織との癒着」、
「日本に密輸された5匹のゴモラ」、「地下研究所にて繰り返される、
マッド・サイエンティストによる恐怖の生体実験」などと陰謀めいたワード
が並ぶあたり、「日本の、伝統的怪獣映画」というよりは「海外の、
ビデオリリース向けB級モンスター・パニック・ムービー」といった匂いが
ちらついてくるです。しかしやっぱり「日本の、ウルトラ」だなあと思う
のは、事件を追うジャーナリスト宮原香波が、マッド・サイエンティストの
実子にして犯罪加害者の家族という業を背負ったキャラであることと、
暴れ回る怪獣の姿に自らの家族の罪を目の当たりにしてしまうあたりの
情感的な部分の描き方で、今回ゲストキャラである香波とヒジカタの二人に
ドラマを集中させた演出にもそれは顕著であります(ヒジカタ以外のDASH
メンバーは、本当に今回特に書き出すような出番がない)。
あえて「ウルトラ」に今回の源流を求めてみれば、「初代マン/謎の
恐竜基地」や「帰ってきたウルトラマン/許されざるいのち」あたりになる
のでしょうが、今回については、これらのエピソードで描かれた「世の中から
つまはじきにされた科学者の悲哀」というより、むしろその科学者達(家族)
の犯した罪に苦しめられる者の苦しみを軸に描かれている物語でもあります。
これは劇中、香波が発見する父親の日記に、視聴者としても死者に対する
哀れみの念が湧かないあたりの描き方にもはっきりしていますが、自分なんか
としては「単に、人気怪獣が暴れ回る話」に物語を堕すことなく、
「視聴者の胸に、確かに残る物語を作ろう」というスタッフの姿勢と
捉えたいですな。そういう意味では軽妙なエピソードの続く「マックス」に
おいても、人気怪獣登場のインパクトと共に(いじられキャラである隊長が、
きちんと「隊長」していたという意味でも)印象に残る話の1本になれた
のではないかと。
…ただ、残念ながら重くしすぎたテーマに対して、疲れ果てた香波への
ヒジカタの一喝等、ドラマ面がやや軽い物になってしまってないかというの
もあるのが…。
今回のゴモラ…造形もメチャカッコエエし尻尾をチョンパされるあたりの
伝統芸(笑)の継承もよし。というか、ゴモラという怪獣のカッコよさを
描いた回としては今回の映像はほぼパーペキ! 今度は更なる品種改良を
重ねて、是非ゴモラU(「80/惑星が並ぶ日何かが起こる」)として再登場
してほしいっス。マヂで。
今回の子ゴモラ…事実上今回の主役。インパクトありすぎ。
今回のデムパ…香波役、大寳智子さんは「1999年の夏休み」などに
出演された女優さんながら、ウルトラ好きには「ガイア」での
ミズノエノリュウの巫女役、黒田恵が印象深いですかね。
次回、いよいよ日本特撮界の岩田鉄五郎、特撮の大聖実相寺昭雄監督降臨
! 業界の至宝たる実相寺監督ワールドを、21世紀を迎えてなおテレビ
放送で見れるとは! 既に予告映像からしてめっちゃ楽しみでありますが、
まずは期待!
第22話「胡蝶の夢」
夢幻神獣(公式HPより)魔デウス登場
監督:実相寺 昭雄/特技監督:菊地 雄一/脚本:小林 雄次
うつし世は夢。夜の夢こそまこと。
幾度となく物語を横切る作り物の蝶。
夢の中で見る他者になっている自分。はたして自分とはその他者の見た夢
という存在に過ぎないか?
粘土に込められていく、無機質な幻。
粘土に、抉られた夢をこねていく女。
名前から紡ぎだされていくカタチ。
疲弊した心を蝕んでいく夜。
自分の現実を示すものは、パチンコ屋や電車、「自分のほかに、他人が
確かに生きていること」を示す騒音。
活字に圧縮されていくセカイ。
自覚する孤独が、キーボードの向こう側に生み出されていく創作に自身を
投影させていく。
ある日突然気付く、自分が創造主の意のままの駒に過ぎない冷酷。
現(うつつ)と幻(ゆめ)の境目。
女が笑う。それはセカイのカタチをこねあげていく者。セカイの終わりを
嘲る者。
交錯するままの現実と幻想の中、セカイを壊す作業が始まる。
四肢というディティールすらも廃した無機質こそ終末のオブジェ。
物語の混沌に決着を着ける、機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナ。
それは、もう、自らの手で混沌を収めることが出来ないことを認めた、
幻想への敗北の証…。嘆きのままに閃光を手にする、創造主を気取っていた
哀れな狂言回し――。
…なんとも抽象的であり、そして挑戦的な一篇であります。
歴代「ウルトラ」については番組のイメージがきちんと固まっているものが
多く、「セブン」、「ティガ」、「ガイア」のSF性。「帰ってきた〜」、
「レオ」、「ネクサス」のハード性、「タロウ」、「80」、「コスモス」の
寓話性。「エース」、「ダイナ」の陽性などなど…。では果たして、こうまで
混沌的に様々な要素をエピソードに盛り込む「マックス」とは何者か? もち
ろん、意地悪な見方をすればそれは「商業的観点から、過去において利益に
至った要素を貪欲に取り込んでいく混沌」そのものかも知れません。しかし
「混沌的な要素を各エピソードに込めて、視聴者が求める番組を作ることを
目指した猥雑さ」という意味では実は「初代マン」に最も近い作り方をして
いる「ウルトラ」と呼べるのではないでしょうか? ある意味この“混沌”
そのものを楽しめるのが「21世紀版空想特撮シリーズ ウルトラマン
マックス」であるし、そういう意味でも、「初代マン」にて印象に残る数々の
エピソードを残した実相寺昭雄監督がメガホンを取った意義は大きいのでは
ないかと思えます(ちなみに今回、関西では最高視聴率だったそうな)。
エピソードそのものは全然メイン視聴者の子供に対して不親切ながら、この不
親切さも含めて「ウルトラは、面白いのだ」ということを実感した次第。
今回の石橋蓮司…ベテランの特撮脚本家。てーか、DASHの制服姿の
石橋蓮司というビジュアルからして今回勝ちだよ(笑)。あの部屋が、
エエ年こいてひとり暮らしの特撮ヲタの老後っぽくて雰囲気パッチリと
いうかなんか切ないというか。
今回の真田薫…ダークすぎる怪獣造型家。平成の久里虫太郎(エース4話
「3億年超獣出現!」)。「名前から発想しますか。天才、金城哲夫的
ですね」てーかお姉さん何者!? マヂ怖かったですよ。ネット検索
しても同じ名前の人のブログなんかが見つかるだけだし…。
今回の諏訪太朗…円谷プロのお抱え監督。やっぱり諏訪太郎って「現場の
叩き上げ」って雰囲気の親父役が似合うな(笑)。炭火焼きオルグ
(「百獣戦隊ガオレンジャー」)や、スペル星人奥村公延のカレー屋
「恐竜や」の常連、横田さん役(「爆竜戦隊アバレンジャー」)とかが
印象に深いですが。
…さて、次回はまたも「ウルトラ」の時代を象徴するひとり、二瓶正也氏
がゲスト出演。その次にはもう1本の実相寺監督作品が控えております。
まだまだ楽しみは尽きないなあ。
…あ、
今回のショーンとコバ。出番及び台詞、最後のマックスBOXだけ(…orz)。
第23話「甦れ青春」
飛魚怪獣フライグラー登場
監督:栃原 広昭/特技監督:鈴木 健二/脚本:小林 雄次
かつて、高度経済成長の時代を守り続けた世代達の光と影。だがその光も
影も、新たな世代は受け継いでいく。時代のツケの清算を、共に支払う
ことさえも引き受けて!
なんとも興奮は収まりませんが、いよいよというかシリーズ伝説のキャラ、
イデ隊員こと二瓶正也客演! 黒部進、桜井浩子と並び立つ御姿にどうして
興奮を隠せますでしょうかっ(デジタル処理による、若き日のお三方の3
ショット記念写真もまた感動)!
イベント的には、二瓶正也登場とDASHの新戦力ダッシュバード3号の
御披露目というのが物語構成的にはメインなんですが(開発者である、
二瓶正也演じるダテ博士があくまで「特殊潜航艇」の呼び名にこだわる
あたりも拍手)、やはり今回のキモは、かつて地球を守った世代の代表
であるトミオカ長官と、現在の世代の代表たるカイトとの対話にあることは
間違いない訳で。
かつての世代のヒーローが、現世代のヒーローに戦う意志を引き継ぐ
名場面といえば、自分なんか真っ先に思い浮かぶのが「劇場版仮面ライダー
アギト」にて、アギト=津上翔一の肩を笑って叩く警視総監本郷猛(!
)だったりしますが。
劇中、カイトに、常に真っ向から戦うことの理由を問うトミオカ。
「それは…誰かを守りたいから」
「その意思の源は何だ」
「誰かを守るのに、理由が必要ですか」
「私は君が羨ましい…私が既に忘れかけていたものを、君は思い出させて
くれた。恐れを知らぬ勇気、人を思いやる心――それさえあれば、我々の
することに意味など必要ないんだ」
あえてトミオカ長官=ウルトラマンと分離した後のハヤタという視点で
見ることに、大きな意味が伴う対話であります。実は番組が始まって以来、
これまで対話するシーンのなかったかつての英雄と現代の戦士。英雄が
問いかける、戦士の戦うことの理由。それはかつて、英雄自身が精一杯
成し遂げてきたことそのもの。戦う意志に継承などいらない。光を、力を
手にしたその瞬間から、成すべきことは決まっている。
初めて、マックスの巨大な姿を直接目の当たりにするトミオカ長官の、
驚きとも羨望とも撮れる眼差しは、世代を跨いで「ウルトラ」を見つめ
続けてきた視聴者にとってはどこまでも象徴的であります。
マックスと共にフライグラーに攻撃を仕掛けるトミオカ。陳腐な言い方を
すれば、新旧二大ヒーローの共闘が形を変えて実現したともいえ、
「ありがとうウルトラマン――マックス」の台詞に代表されるように、
全編興奮が収まることなく見れた回でありました。ラスト、海岸にて誇り
高くダッシュバード3号から降りてくるトミオカ長官のなんと
格好いいことか…。
今回の怪獣…フライグラー。既存の生物が環境破壊のために突然変異を
起こし、人間に復讐の牙を剥く。王道的な設定と共に、マックスを苦しめる
ストロング&ヘビースタイルな存在感があまりに素敵。トミオカ長官主役回
に相応しい王道怪獣と太鼓判。
今回のダテ博士…物語の主観があくまでトミオカとカイトに向いていた分、
せっかくの客演ながら割を喰った気も…。でもあの陽性のキャラクターと
笑顔はやはり素敵であります。また出てくるときはペスターかジェロニモン
再登場の回で(にやりっ)。
今回のショーン…英雄世代共闘パート2(笑)。本編中、やるかやるか?
と気が気でなかったイデ隊員(ダテ博士)との共演実現に大喝采! てーか
コレをやらなかったら今回イデ隊員客演の意味はなかったですよ。満足満足。
今回のエリー…「見習わないと!」
ともあれダッシュバード3号、トミオカ長官が操縦したメカということで
俄然オモチャ欲しくなってもうた…今度買ってくるっス! あと、絶対
オオヤマ隊長(「80」)みたいに、今回でウルトラマンの正体に気付いて
るよな。
次回、再び実相寺監督とメトロン星人襲来! メトロン星人+ちゃぶ台の
構図は、そろそろ脱却していい構図とも思うんだけれど…それはキャラクター
のイメージが許さないのね(くすくす)。
第24話「狙われない街」
対話宇宙人メトロン星人再登場
監督:実相寺 昭雄/特技監督:菊地 雄一/脚本:小林 雄次
「メトロン星人の地球侵略計画はこうして終わったのです。人間同士の信頼感を
利用するとは恐るべき宇宙人です。でもご安心下さい、このお話は遠い遠い
未来の物語なのです…。え、何故ですって? …我々人類は今、宇宙人に
狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから…」(「ウルトラセブン/
狙われた街」)
特撮界の岩田鉄五郎こと実相寺監督の「ウルトラセブン」初監督エピソード、
監督自ら38年の時を経ての続編であります。そういうことで、今回の
エピソードを見る前ちょいと色々「狙われた街」関連の情報を検索していた
のですが、嘘か誠か興味深い事項ひとつ発見。
輸出を前提として制作されてた「ウルトラセブン」では、制作当初割と
日本的とか日常的とかっぽい描写はタブーとされていたそうで、
「狙われた街」を撮ったがために実相寺監督はしばらく京都へ修行の旅に
出されていたそうな…。番組後半の資金繰りの苦しさから、「あまり特撮を
使わないでも話が撮れる監督」ということで呼び戻されたとのこと。真偽の
検証には至っていませんが、本当だったら今回のエピソード、まさに38年目
のカタキ討ちであります(苦笑)。
半分、その実相寺演出のおかげで人気怪獣の仲間入りを果たした
メトロン星人の「再」登場に、六平政直に寺田農、「ウルトラマンネクサス」
のトラウマおじさん堀内正美という番組始まって以来の濃ゆい布陣のゲストに
、OPテロップに堂々その名を刻む「ピアノ/冬木透」!! OP
テロップに刻まれた方々のお名前だけでクラクラ来たですよ…。
ところどころで挿入されるサル並みに退化、精神荒廃した人間達のカットに、
メトロン星人寺田農が語る、もう我々が手を下すまでもなくこの星は我々の
ものになる…のくだりは、人間性の絶望感を描いた部分として実は子供層向け
となる「ウルトラ」ではタブーに当たる部分。元より「ウルトラ」における
タブーを破り続けて、今日の評価に至った監督が撮っているのだから当然と
いえば当然だけれど、今回の凄いところは、その絶望に嘆く側を演じるのが
「本来人間の精神の荒廃を目論んでいたメトロン星人」であるという皮肉
――。
カイト、ミズキと行動を共にする楢崎刑事は事あるごとに人間の心の荒廃を
嘆く言葉を発する。それは、彼が少年期に、傷を負って匿うこととなった
メトロン星人との交流の過去があったことにも起因しているはずである。
むしろ、信頼関係という“人間の心”を突こうとしたメトロン星人の方が、
人間性の美しさ、豊かさに対する敬意を持っていたのかも知れない。楢崎から
見れば、人間達こそ「宇宙人の信頼を裏切り荒廃していく、恐ろしい生き物」
なのではないか。
最初の作戦を潰され、以来40年間北川町に潜伏せざるを得なくなって
しまったメトロン星人がその間に見たものは、自分の作戦が潰えたにも拘らず、
自分のもたらそうとしてきた世界を、人間達が勝手に築き上げていく様の驚愕で
あり、落胆であり、虚無感であるはず。携帯電話を利用した彼の最後の
起こした事件は、地球を去りゆくにあたっての、人間達に対する最後の嫌味に
他ならないのだ。そのメトロン星人が最後に見つめる北川町の夕陽は、
それだけが自らがこの星に降り立った頃と変わりなく美しい…。
最後の地球での情景を胸に刻み、迎えの宇宙船に乗って去りゆくメトロン
星人。マックスすらも、もうその宇宙船に拳を向けることは出来ない。
彼等が手を下すことなく、地球が彼らの手に堕ちるとしても――彼等が地球を
見限ったことを知ってしまったから。
ケン坊と呼ばれた楢崎少年が刑事の道に進んだのは、もしかしたら友たる
宇宙人が愛してさえもいたであろう、人の心の美しさを守りたいという願い
もあったのかもしれない。だが人の心は宇宙人に見切りを付けられるほどに荒
み、楢崎少年もまた刑事という過酷な絶望感の只中を歩んでいくしかない。
やっとこの荒んでしまった世界から帰っていった友達に思いを馳せつつ、
楢崎は刑事という現実に戻っていく。もしも、その楢崎の仕事がたった
ひとりでも誰かの荒んだ心を正すことが出来るのなら――黄昏に象徴される、
40年に渡るこの絶望的なメトロン星人の物語の、ひとつだけの希望
たりえないだろうか? オーラス、途切れたフィルムに遮られた、ミズキの
足掻きの言葉に代えて。
今回のカイト…ひたすら状況に翻弄され続ける役。マックスからカイトの
声が出るという描写からして、変身後もカイト自身の意識は強いらしいことは
どうやら判明。
今回と40年前のメトロン星人…やっぱりちゃぶ台で客人を迎えるあたり、
きっと愛用のちゃぶ台も間違いなく本星への土産に持って行ったんだろうなあ
(しみじみ)。
…ところで、今回の話で一番衝撃的なのは、親父が死んだと思い込んで
復讐のために超獣ドラゴリーと手を組んで地球壊滅に乗り出した
メトロン星人jr(エース7話「怪獣対超獣対宇宙人」、8話
「太陽の命 エースの命」)は、実はまったくの犬死だったということだわな
あ…(なーむー)。
そして、響き渡る冬木透によるピアノソロのショッキングナンバー…。
これだけのために冬木透の名前を出してきたという意味でも、今回の衝撃度
はスゴ過ぎであります。
第25話「遥かなる友人」
友好異星人ネリル星人キーフ 巨大異星人ゴドレイ星人登場
監督:八木 毅/特技監督:鈴木 健二/脚本:太田 愛
平成以降の「ウルトラ」に、一貫して爽やかな視聴感を残してくる太田愛
脚本の回ですが…のっけからぶっちゃけちゃうと、今回はちょい微妙。
「ウルトラ」の世界観の魅力のひとつに、我々が足を着けている現実の世界に
突然現れる寓話性というのもあるのですが、太田愛脚本の魅力はその寓話性に、
ハートフルな味付けをした心温まる世界が構築されているところに大きいと
愚考しています。「ダイナ/少年宇宙人」は、自分の中で現段階で全「
ウルトラ」のベストエピソードトップ10に入る話だし。そして今回、
少年と友情を結ぶ友好異星人キーフなんですが…。
これだけははっきり言っておくけれど、河相我聞を起用したキーフの
キャラクター自体には個人的に問題ないです(もし、最初に入った部屋に
転がってた雑誌の表紙がカンニング竹山あたりだったりしたら、一発で物語が
成り立たなくなるけど…)。キーフというとことん他者を信頼しようとする、
お人よしでもあるキャラクターを演じるにあたっての無垢な演技にも嫌味は
ないし、今回の一方の主人公である駈少年との友情のドラマについても、
いつもながらの太田愛脚本で最後まで見入ってしまったところ。
残念ながら、問題はどうもその今回の主役二人のドラマを取り巻く環境、
ディティールにあるというか…。
宇宙人は地球の敵と認識されてしまっている情勢の中、あっさりとDASH
に投降したキーフに対してDASHメンバーが全員一致でキーフに対して同情
の姿勢を見せている…あたりは、まあDASHというチームワーク抜群の
チームとしてはこれでいいのかも知れないけれど、それにしたって対侵略
宇宙人の最前線に立つDASHの面々が、不用意にキーフを信用し、同情の
態度を見せてるのがなんとも唐突過ぎるというか腑に落ちないというかで…。
むしろ、キーフの扱いをめぐってチーム内の意見が分かれる中、カイトだけが
キーフの弁護に回り、そして他のメンバーも徐々にカイトに賛同の姿勢に
なっていく…ってほうが、友好宇宙人を巡る話としては良かないか
? キーフを調べる科学者グループだけを悪者扱いにしたことが、
ドラマを巡るリアリティーを伴った空気を損ねたものにしちゃってる
んじゃないかという気がしたのですよ。
なんの伏線もなく唐突に登場し、破壊テロを仕掛けるゴドレイ星人に至って
は本当にただの通り魔扱いだし(実相寺監督がデウス・エクス・マキナの
存在について同じ番組で語ったばかりというのに)、一番の問題は、
「宇宙人は地球の敵」とする世論がウルトラマンマックスの存在をどう
捉えているのか一切語られないこと…!
正体まで見せて言葉で友好を語りかけてくるのキーフは否、正体不明で
都合よく怪獣・宇宙人を退治するマックスは是。その矛盾について口にする
者は劇中どこにも登場しないというのがこのストーリー上の最大の構造的
欠陥というか…今回の友情ドラマをともすれば空虚なものにしちゃってた
んじゃないかなあと。
ただのイケメン俳優起用話に見えて、その実主軸となるドラマが爽やかな
ものになっていただけに(むしろイケメン河相我聞が好感に見えたし)、
こういう「周りにまで手が回らなかった」印象があったのが残念であります。
次回、クリスマス話ということで脚本は引き続き太田愛。太田愛脚本に
毎度偽善者スイッチを押される(笑)嫌な特撮オヤジとしても、2週連続での
太田愛ワールドは嬉しい限り、次回も嫌味なく楽しめればよいなあ。
今回の侵略宇宙人…ゴドレイ星人。なんの作戦も立てることなく、己の
実力のみの破壊活動で真っ向から地球に殴りこんできた、意外と侠気
宇宙人(!)。肉を斬らせて骨を絶つの姿勢でマクシウムカノンを防いだり、
正直友情もクソもない全編バトル話にて登場して欲しかった宇宙人であります。
かっこええ。
今回の河相我聞…時節柄(2005年末)、小さい女の子の元に駆け寄って
あいさつするのは危険と思います(すんまそん)。
今週のひと言:いつ部屋に変身友好宇宙人が来てもいいように、部屋には
熊田曜子や磯山さやかあたりのグラビア雑誌を散りばめておこうね(友情!)。
豪雪地帯酒店・第二事業部はものをつくりたいすべての人々を
応援します。
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