「ウルトラマンマックス」 第6話〜第10話





第6話「爆撃、5秒前!」

装甲怪獣レッドキング 両棲怪獣サラマドン  飛膜怪獣パラグラー 電脳珍獣ピグモン登場
監督:栃原広昭/特技監督:鈴木健二/脚本:たけうちきよと

「マックス」初の前後編の後編。やはり「怪獣無法地帯」並みのレッドキング の清原度を堪能させてくれるあたりは流石というか、更に怪獣島 (サブジェクト・ファントム)の爆破を巡るタイムリミットが番組上かつて ない緊張感を生み出し、「怪獣無法地帯」でありつつ「怪彗星ツイフォン」 でもあるという構成の贅沢さに加え、ここにカイトとの友情を通して語られる ピグモンの物語が番組を単なる怪獣続々登場の豪華編にとどめないエピソード となりました。
 小柄な怪獣でありながら、人間の友達として常に勇気を奮い続けるピグモン の自己犠牲も厭わない「小さな英雄」ぶりについては、スタッフによる ピグモンというキャラクターに対する敬意が存分に感じられるものとなって おり、メイン視聴者である幼年層がピグモンという存在をどう感じ取って くれたかはオヤジ世代として知りたいところであります。

 前回に引き続いての登場の進藤(蛍雪次郎)については、まさに蛍雪次郎 全開! 怪獣騒ぎに首を突っ込みながらも気弱さゆえに右往左往する様は、 物語の緊張感をちょうどいい具合に解してくれております。せっかくの 考古学者というゲストキャラゆえ、進藤の助言が事件解決のカギとなると いう展開が欲しかったところですが、まあそこまでの重要キャラになるのは 蛍雪次郎らしくないですか(含笑)。

 今回の見所のひとつは、黒部進演じるトミオカ長官の非常な決断を下しつつも 隊員たちを信じる人間味溢れるキャラクターにもあり、その信頼に応えて全員 帰還する 隊員たちの様とあいまって、DASHというチームのよい意味での信頼感と 絆は今後も番組の方向性そのものを現しているようにも感じる部分。
 ラスト、ピグモンの去った先、空へ飛んでいく“赤い風船”の演出と あいまって、怪獣バトル、物語の緊張感とキャラクターたちの絆、そして ピグモンという「小さな英雄」が我々視聴者にすらもたらしてくれた勇気と いい、現時点でのベストエピソードとも言える出来になったと楽しませて もらいましたです。

 今回のレッドキング…弾切れを起こして視聴者を失笑させる芸人ぶりから してまさに怪獣界のジャイアン(笑)。宇宙に運ばれるにしても、平成の世 では八つ裂き光輪ならぬマクシウムソードでバラせなかった。
 今回のショーン隊員の専用アイテム…トンカチとノコギリ。
 今回のエリーの算出確立…「判らない…こんな可能性の低い作戦に、なぜ」 の台詞どおり3%。ただし今後の人間に対する学習の決意を示しいてるで あろうオーラスのぎこちない微笑で萌え度30%アップ(すんまそん)。



第7話「星の破壊者」

宇宙工作員ケサム登場
監督:梶 研吾 /特技監督:菊地 雄一/脚本:梶 研吾・大倉 崇裕

 平成以降、イケメン宇宙人が地球にやってきたなんて話だと「ダイナ/ 優しい標的」のクレア星雲人や「コスモス/星の恋人」のミゲロン星人など ロクな奴が来ないというのが私見ですが(前者はキャラ的に、後者は物語的に /笑)、今回地球に来訪するのは「仮面ライダー龍騎」の神崎士郎お兄ちゃん こと菊地謙三郎氏。あの神崎士郎お兄ちゃんが侵略者となるなら、どんな知略 宇宙人になるもんだかと期待してみたら…いろんな意味で意外な役どころで ありました。

 宇宙の秩序を守るために文明を滅ぼしていくという工作員(その行動原理は 光の国の住民たるウルトラマンたちと真っ向から対を成すものというのが 印象的であります)。その自らの役割に疲弊しきっていたケサムが、ミズキ との僅かな触れ合いの中で改心していく…。異文明同士のファーストコンタクト 物の定石として話的には決して悪くないと思うんだけど、やっぱりミズキとの 接触による改心までの過程の時間が短すぎじゃないというのも気になった ポイント…そう簡単に自分自身の生まれ育った文明のあり方を否定できるかと いうのも気になった点で、ここはせめてひと晩共に過ごして(エロ意味じゃ ないぞ!)自分達の文明について語らいあう程度のディスカッションと コミニュケーションの過程を経たほうが、最後の自ら起爆装置のスイッチを 切る描写に説得力があった気もしますが。

 しかしほぼ全編山での撮影というのは、「文明を破壊する宇宙人との接触」 というストーリーにおいては、あえて文明的な面を見せないという点では 効果的でもあり、あの格好の神崎士郎お兄ちゃんがビル街を徘徊するよりは 説得力あったかも(笑)。

 アクション面においては、今回もNプロジェクト以降のウルトラを代表する 画となった板野サーカス演出が冴え渡り、ダッシュバード2号が一斉発射した ミサイルを機体ごと空中静止→連続爆破に、更にマックスの、空中から巨大 ケサムの攻撃を躱しつつのマクシウムソード居合い斬り…。シーン展開は 違えど、ケサムの背負った悲壮感とあいまって、何故かこのシーンには セブンの対ギエロン星獣戦が重なるです。

 なんとも報われない重さを残すストーリーでありつつ、ラストのヒジカタの 信頼の大切さを諭す言葉に救われるように発せられたカイトの台詞は、 これもまた「セブン/遊星より愛をこめて」のラストのダンの台詞と重なり (チェックできん? すんまそん)、「ウルトラ」が40年に渡って 訴え続けた理想が受け継がれ続けていることが素直に胸に響く、いい締め方で ありましたと個人的には賞賛。

 今回のエリーの発音「はいっすくぅーる」。あと、番組開始時から話題の 怪獣デザインコンテストも、いよいよ今月(8月)27日には発表とのこと。 ネットで知り合った方も応募されているということで、個人的にも発表を 楽しみにしてますです。

(余談…ギエロン星獣も「危険な文明」の被害者という意味、来訪目的は 違えど今回のストーリーはやっぱり「超兵器R1号」が重なるのかも…。 自身の背負った文明の尖兵として、ケサムもまたある意味で、 血を吐きながら星々を走り続けるマラソンランナーだったのでしょうか)



第8話「DASH壊滅!?」

甲虫型宇宙怪獣バグダラス登場
監督:梶 研吾/特技監督:菊地 雄一/脚本:林 壮太郎

 隕石に乗って飛来した小型生物というバグダラスの出自からしてダリーや 「エヴァ」第拾参話の第11使徒イロウルみたいなミクロの恐怖が描かれる のかと思っていたのですが、思った以上にエイリアン的展開というか。
 捕食や卵を産み付けるといった直接的恐怖描写は抑えられているとはいえ、 バグダラスの存在感は非常に「ネクサス」のスペースビーストに近いものと 言え、ミズキ対5メートルサイズという身近に感じる大きさに成長した バグダラスの画など「ネクサス」を思い起こさせる構図が多々登場した エピソードとなっております。

 今回問題点があるとすれば、やはり「人間のエネルギーを吸い取る」という バグダラスの生態に対してDASH隊員を初めとする被害者がやたら元気で (汗)、いまひとつバグダラスの存在に対する恐怖感が伝わらなかったと いうか…被害者が一定時間を置くと二度と立ち上がれなくなるとか、そうした 物語上のタイムリミットひとつ設けるだけでもストーリーに更なる緊張感を 加えられたと思いますが。そのバグダラスの特撮面で秀逸なのはなんと いっても翅の描写で、その翅の高速振動による波動そのものを武器とした 芸達者ぶりを堪能させていただきました。ダッシュバード1号との板野 サーカスによる空中戦においても、翅の波動でミサイルを撃墜→再び板野 ミサイル発射後、攻撃をレーザーに切り替えて牽制→レーザーを躱すため、 波動による防御が疎かになったバグダラスに殺到する先に発射されたミ サイルという芸コマな演出が光っております。そしてマックスによる とどめの、高速滑空してくるバグダラスに対する、すれ違いざまに撃ち放つ マクシウムカノンなど…毎回のことながら特撮面から殺陣のひとつひとつに 対する、スタッフの心意気が輝いておりますです。

 今回の柳眉はなんといっても、エリー、ついに起つの描写。ベースタイタン 内部の危機に際し、日頃椅子と一体化しているとも思えるデスクワーク専門 キャラが決然と立ち上がる瞬間のかっこよさ! 思わずあの後、アンドロイド としての超感知能力を駆使し、長ドス片手にバグダラスとタイマンの死闘して くれるのかとか頭悪く期待してしまったのですが(笑)、倒れたコバを助ける 際の、コバの「人間は論理を超えなきゃならないときもあるんだ!」の台詞 に対する「人間の気持ちとして言ってるんです」の台詞が…! 第6話での 笑顔といい、アンドロイドであるエリーが、これまでのストーリーの積み 重ねにて『学習』してきた『人間らしさ』というファクターが、またひとつ 成長という過程を経て現出した瞬間というか、間違いなく今回のベスト シーンとして差し支えないであります。(余談ながら、ミズキを逃すために 二丁拳銃を抜いてバグダラスに挑むコバの画も、ダッシュバード2号に乗って 撃墜される役から一歩歩み出た瞬間として、今回最高の男気シーンとして 記憶しますです/笑)。

 今回のショーンのひみつ道具…でかい虫メガネ。
 今回のエリーのひみつ能力…指から火。
 余談ながら、今回カイトの誕生日を祝う面々というまたDASHのアット ホームな雰囲気が描かれますが、「コスモス」撮影中のエピソードとして、 隊長役嶋大輔のリアル誕生日の際、チームアイズの面々である俳優陣から プレゼントとして「嶋大輔」と書かれたでかいトロフィーが送られたという のがあるそうで…(ホノボノ)。俳優陣のチームワークがある意味魅力的な チームを作っているのだなという感慨も働きますが、DASHメンバーの俳優 陣にもまた、役に留まらない今後のアットホームさとチームワークぶりを期待 したいですな。



第9話「龍の恋人」

伝説怪龍ナツノメリュウ登場
監督:佐藤 太/特技監督:村石 宏實/脚本:小林 雄次

 やっちまったね…というのが視聴を終えた第一印象。「マックス」という 番組自体、過去作品の知名度に頼った焼き直しというネガティヴな側面を 語られるのは避けて通れない道のはずで、それだからこそ「マックスならでは 」という番組を作ろうという意気込みをこれまでの回で少しずつ感じ取って いただけに、今回はその“ネガティヴな側面”が前面に出てしまった話…。

 全編の舞台は湖畔の寂びれた村、村に残る伝承を軸に対立する村の構図、 そして驕れる人間達の前に、怒りを纏って甦る伝説の怪獣…というのはまさに 円谷的なフォーマットで(単に山中が舞台というだけなら「ファイヤーマン」 が顕著ですが/苦笑)、村の観光誘致に絡んで伝説を利用しようとする ゴロツキ息子と伝説を崇拝する父親(村長)の対立というのはある意味 現代的な視点を旧来のフォーマットに盛り込んだという評価も出来るのですが、 ここでカイトにしか姿が見えない、声が聞こえないという謎の少女が現れた 時点で俄然物語が“安易”な方向へ…。

 少女のイメージは雪ん子か「ネオス」2話でのザム星人の代弁者の少女 (正体すげえよ!)かやっぱり「ノンマルトの使者」か?? という特撮 オヤジとして嫌な嫌な嫌なツッコミが果てなく働いてしまう展開! 違うだろ、 「マックスならでは」をやるならここで旧来のイメージを踏襲しては一番 いけなかった部分でもあるだろとも思ってしまったのですよ。たとえば龍の 伝説をカイトに語るのは最後まで村長の役で、 あの少女の正体は実は村長の 少年時代の初恋の相手だったとか…そういうキャラクター同士の縁を絡めた話 にも出来たはずではとも思えて、ひたすら安易に過去の「神秘な メッセンジャーは便利キャラ」という既存品に頼った展開が残念にも思えた話。 個人的には、あまり夏祭りの夜という風情が機能していない脚本でも あったなあと。

 さて、脚本的に機能していない夏祭りの夜が、ビジュアル面ではこれでもか の大健闘! 着ぐるみのサイズの巨大さに目を奪われるナツノメリュウの、 炎を翼にした浮上シーンの操演の荘厳さ(“翼”ってのは、本来和製の龍 よりも西洋の“竜(ドラゴン)”のイメージですが)、そして少女の制止を 振り切るように変身(…ここもまたツッ込みたいからツッ込もうという ポイントですが)したマックス、両者の背に重なるCGによる打ち上げ花火の イメージのなんと苛烈にて華麗! 目を奪われるイメージか! 今回の 特技監督はやはり日本特撮界きっての武闘派村石宏實監督ですが、単に アクション描写のみならず、鮮烈な印象を残すビジュアルを生み出す才能の 持ち主であることが窺え(近作では「コスモス/操り怪獣」など)、 まさに夏の終わりという放送時期に相応しい画を魅せてもらったとここに 至って満足であります。

 今回のエリーの検査能力、ワイドショーに映った竜が作り物と見破る…って、 カイトとミズキが出張する前にそういうの調べりゃ良かっただけの話では…?
 とりあえず今回のオチについては…言い出すと「だから特撮オヤジって ねちっこくてみみっちくてヤだよ」と言われかねないのでノーコメント !
 あと今回のゲストとして、村に残る伝説を守るために苦悩する村長役、 河原さぶ氏の演技が光っております…ちなみにこの方、かつて河原裕昌名義 にて「ガンバの冒険」の主題歌を歌っていた方とちょっとだけトリビア。

 余談…既にアントラーとバラージの登場が決定しているだけに当然だけど、 村に残っていた竜退治の英雄の伝承…これもノアの巨人や「80」の光の巨人 同様、過去に地球に飛来したウルトラマンってイメージに結び付けられる ものを…ちなみに「英雄伝承の復活」というネタなら「ファイヤーマン」 1、2話もそうですな。



第10話「少年DASH」

空間転移怪獣メタシサス登場
監督:佐藤 太/特技監督:村石 宏實/脚本:黒田 洋介

 実は割と放映前からチェック入れていた回であります。今回の主役は、 ダッシュバード2号に乗って撃墜される役(ついでにオモチャの売り上げ 落とすのに貢献しいてる役/笑)コバ隊員。そして脚本は、「おねがい ティーチャー」など平成の美少女系アニメの脚本を多く手がける黒田洋介氏。 タイトルからして子供とDASHの友情話っぽいし、個人的にもどこか 二枚目半な戦闘のプロ隊員が奮闘する話(「ウルトラマン/射つな!アラシ」、 「ティガ/宇宙からの友」、「ネオス/見えない絆」など)は割と好き なので、ちょっと期待しつつ鑑賞に臨みましたです。

 どこか「80」っぽい雰囲気もある小学生による基地見学(「恐れていた バルタン星人の動物園作戦」)から始まり、DASHに対する豊富な知識と その憧れを隠さない平成の怪獣殿下とも呼ぶべきマサユキ君とコバの最低な 出会い。さすがに社会人としてその登場はマズいだろというコバに対して、 社会のことなんかまだ判っていない子供の素直かつ痛烈なひと言。マサユキ君 ちょっとベースタイタンの裏手にいらっしゃい(夢のない話すんまそん)。 そして空間をランダムに転移する怪獣メタシサス出現と、偶然にもメタシサス の空間転移の移動法則を見つけてしまうマサユキ…。

 怪獣の空間転移能力が、溢れかえった携帯電話の電磁波に反応する故という 科学的アイデアはいかにもウルトラシリーズ(「ティガ」のガゾートという 先駆者もいますが)。その怪獣の秘密に子供が絡み、隊員との友情話に 繋がるあたりのストーリーの持っていき方は、「マックス」というメイン 視聴者の未就学児童の視点に沿った番組として個人的には素晴らしく良。 失敗をあきらめず、最終的に少年の協力を経て見事に名誉挽回を果たすコバと 少年の握手も非常に爽やか。ただし、唯一残念と思うのは…放送時間という 尺の問題もあるかもしれないけれど、マサユキがコバを認めるまでの展開が やや唐突で、コバと少年の関係成立までのプロセスが弱く感じたこと…。

 たとえばコバを心底軽視しているマサユキが、そのコバの命懸けの奮闘と 任務の過酷さを目の当たりにして、自分のものの見方を反省する…という シーンひとつあったほうが、ラストの握手の爽やかな感動が盛り上がるはず とも思ったんですよ。DASHに憧れる少年に対し、DASH隊員としての 姿勢をコバが示していないままというのも番組見てて感じてたので、正直 「一度や二度の失敗がなんだ!」という台詞の説得力が…(逃げるハヤタと 子供たちを救うため、命令違反を犯してまでザラガスを攻撃したアラシの 苦悩を見習え! みたいな)。

 少年と隊員との友情という王道の踏襲、携帯電話の電磁波という今日的な ファクターを怪獣のアイデアに持ってきたあたりと、「ウルトラ」の脚本 としてはまず及第点ながら、一番肝心とならなければならない部分でツメの 甘さが出た…残念ながらそんな感想が否めないであります。ただ、自分も 手がけた作品全部見たという訳でないけれど、黒田洋介氏と言えば現在の 日本のアニメ業界に少なからず実績を記している脚本家。また今後の登板も 当然あるものと思っていますので、今回の不満点をスッキリさせてくれる 物語をまた見せてほしいと切に願います。

 今月のコバ隊員の出勤状況、遅刻3回。ちなみに本日32分遅刻。社会人と して普通に査定に響くというか危険な状態です。非番日はハメを外さないよう 注意しましょう(わっしも気を付けます…orz)。
 さて来週はいよいよ金子修介監督再臨とアントラー登場…! やべぇなあ、 今回が今回だっただけに今から過剰に期待しちゃってるよわっし(わくわく)。 いよいよ第一クールのクライマックス、ウルトラマンゼノン(トップから リンクしている公式サイトにて、ついにデザイン公開!)の登場に合わせ、 キングジョーやゼットン等人気怪獣続々登場の展開が続くとのこと。こちらの 感想も、まだまだネタが途切れることなく続けられそうであります。

 …ところで「おねがいティーチャー」って、11話で最終回にしていれば わっし的には大傑作アニメになりえたのに(苦笑)。


豪雪地帯酒店・第二事業部はものをつくりたいすべての人々を 応援します。


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